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東北から新産業を SMBC「イノベーション・カタリスト」始動 DATERISE!との連携イベント 仙台で開催(上)

NIKKEI THE PITCHは9月5日、仙台市で開催されたイノベーションイベント「DATERISE!」と連携したセミナーを開催した。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の長谷部智也執行役員やXLOCAL(クロスローカル)の山中大介代表取締役らが登壇し、東北が目指すべきイノベーションの未来像について議論した。

大企業とスタートアップの化学反応 触媒役に

「これまでも私たちはスタートアップ支援をしてきたが、もっとできることがあるはず。スタートアップと大企業のマッチングにより化学反応を起こしていきたい」と、SMBCグループの長谷部智也執行役員は強調した。

長谷部氏は1997年、当時のさくら銀行に入行し、3年で退職した。その後20年以上、外資系コンサルティングファームで活躍し、2024年に三井住友フィナンシャルグループへ復帰した。メガバンクでは「出戻り」としての執行役員就任は異例で、業界内でも注目される人事となった。

入行後、デジタル・イノベーション本部の責任者に就任した。チームのミッションは、「大企業・中堅企業とスタートアップを交えた事業共創」。多くの金融機関が注力する分野だが、長谷部氏のアプローチには独自性がある。大企業とスタートアップを同時に担当する「イノベーション・カタリスト」という専門家チームを置き、両者の文化の違いを踏まえながら、革新的なビジネスや技術を生み出そうとしている。

SMBCグループ 長谷部智也執行役員
SMBCグループ 長谷部智也執行役員

長谷部氏は総勢10人のイノベーション・カタリストを率いる。担当分野はフィジカルAI、量子コンピューター、ブロックチェーンから、ヘルステック、宇宙・防衛まで多岐にわたる。長谷部氏は総勢10人のイノベーション・カタリストを率いる。担当分野は生成AI、量子コンピューター、ブロックチェーンから、ヘルステック、製造業DX、宇宙・防衛まで多岐にわたる。長谷部氏は「国が掲げる成長17分野の多くをカバーしている。スタートアップと大企業のマッチングを通じて、新しい産業の創造に貢献したい」と語った。

コンサルタント時代から、大企業とスタートアップの間には時間軸の違いなど多くの課題があることを肌で感じてきたという。「スタートアップが優れた提案をしても、大企業側が『検討します』と言ったまま3カ月ほどかかり、資金繰りに苦しむことがある。私たちイノベーション・カタリストが、こうした課題に一つ一つ丁寧に対応していく」と話した。

富士通やソフトバンクと医療分野で連携 スタートアップも参画

政府と連携した具体的な大型プロジェクトも動き出している。SMBCグループ、富士通、ソフトバンクによる「国産ヘルスケア基盤」の構築だ。

富士通は医療データを安心・安全に流通させる基盤構築を、ソフトバンクはユーザーアプリの開発・提供を、SMBCグループはデジタル接点を活用した普及促進と、金融との連携・融合を通じた付加価値の向上を担う。健康増進や病院経営の効率化を通じて、年間5兆円規模の医療費削減を目指す。SMBCグループが2020年に連結子会社化したスタートアップ、プラスメディ(東京・千代田)も加わる。プラスメディの主力サービスである患者支援アプリ「wellcne(ウェルコネ)」は、病院での診察の順番待ちの状況をスマートフォンに通知したり、簡単にオンライン決済ができるツールとして導入が広がっている。

長谷部氏は、「日本の社会課題を解決するには、スタートアップの力が必要だ。全国各地で大企業とのマッチングを進め、成果を出したい。ぜひ相談してほしい」と聴講者に呼びかけた。

東北の強みは人材力とインフラ 先端産業の集積地に

セッション「東北発イノベーション~伝統と変革の新結合に向けて」では、SMBCグループのイノベーション・カタリストである三科朋大氏と、地域みらいブレインリンク(東京・港)の永杉博正社長が対談した。地域みらいブレインリンクはJR東日本と野村総合研究所が2025年に設立したシンクタンクで、地域課題の解決のためにスタートアップ支援など幅広く手掛ける。同じ問題意識を持つSMBCグループとも連携の余地が大きく、日本の地域課題が集中する東北でイノベーションに取り組んでいる。

地域みらいブレインリンクの永杉社長は、JR東日本で数多くの地域活性化プロジェクトを担ってきた。秋田駅周辺の都市開発「ノーザンステーションゲート秋田」の推進や、秋田県仙北市角館・岩手県雫石町の小岩井農場での高級宿泊施設開業などを手掛け、海外富裕層の誘客に力を注いだ。2026年には、東京・高輪ゲートウェイの起業家支援拠点「LiSH」を秋田駅にも開設し、地方創生を後押ししている。

「東北には大きな成長の可能性がある」。永杉氏はこう強調した。東北6県すべてに新幹線が通り、高速道路などのインフラも整備されている。「重化学工業が発展した太平洋ベルト地帯に比べて経済成長で後れをとったが、結果として半導体など先端分野の産業が集中した。東京エレクトロン宮城のように世界最先端の技術を持つ企業も多い」と語った。

永杉氏(右)は、JR東日本で秋田の角館や岩手の小岩井農場などで地域活性化の取り組みを成功させてきた
永杉氏(右)は、JR東日本で秋田の角館や岩手の小岩井農場などで地域活性化の取り組みを成功させてきた

永杉氏は「東北は米国でイノベーションの発信地として注目されるテキサス州オースティンと共通点が多い。東北は日本版オースティンになれる可能性がある」とも話した。オースティンはテスラやオラクルなど多くのグローバル企業が本拠地を移す都市だ。半導体やAIのスタートアップ集積が進み、「シリコンヒルズ」とも呼ばれる。永杉氏は東北出身の学生のUターン志向が高いという調査結果も紹介。「東北の優秀な人材が地域の自治体や企業と連携して活躍できるよう伴走していきたい」と語った。

イノベーション創出へ 連携の場づくり進める

SMBCグループのデジタル・イノベーション本部の三科氏は、2024年に三井住友銀行に入行した。鉄鋼メーカーで生産技術職、コンサルティング会社での経験を積んでおり、製造業分野などのDXプロジェクトに強い。大学院の専攻は化学工学。東北のスタートアップの強みであるディープテック系の目利き力を生かして、イノベーション・カタリストとして東北発のイノベーションを後押ししていく考えだ。

三科氏は、「SMBCグループとしてイノベーションの場を提供し、さまざまな地域や分野で成長を支援していきたい」と語った。SMBCは2200社以上のスタートアップと取引関係があるが、大企業と中堅企業やスタートアップのマッチングを進めるうえでは、地域ごとの産業の強みを考慮していくことが重要だとした。

三科氏が具体的な事例として紹介したのは、2016年に秋田県大潟村で設立した「みらい共創ファームあきた」だ。メガバンクが初めて設立した農地所有適格法人(農地を所有・利用できる法人)で、自動運転トラクターや高性能ドローン、AIを搭載した選果機など、デジタル技術を駆使したスマート農業を実践している。SMBCグループからの出向社員も加わり、さまざまな企業との連携を進めている。

SMBCグループ デジタル・イノベーション本部 イノベーション・カタリスト 三科 朋大氏
SMBCグループ デジタル・イノベーション本部 イノベーション・カタリスト 三科 朋大氏

SMBCグループは2025年、東京・丸の内に事業共創拠点「HOOPSLINK」を開設した。各地からアクセスしやすく、地方のスタートアップと大企業の連携の場となっている。三科氏のようなイノベーション・カタリストが加わり、それぞれの専門領域で大企業・中堅企業の課題やニーズとスタートアップの技術・ソリューションをつなぎ合わせることで、大きな化学反応を起こす狙いだ。

HOOPSLINK https://hoops-link-tokyo.com/

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