NIKKEI THE PITCHスタートアップ/アトツギベンチャー/
ソーシャルビジネス起業家/学生
支援プロジェクト

  • ホーム
  • ライブラリー
  • IVS×NIKKEI THE PITCHセッション②メガバンク系VC3社「最大の強みは継続投資」
IVS×NIKKEI THE PITCHセッション②メガバンク系VC3社「最大の強みは継続投資」

最大の強みは継続投資

2025年7月3日、IVS2025で「『今"とも"に挑む』~マクロ逆風下におけるメガバンク系VC3行の視点~」をテーマとしたセッションが開催されました。スタートアップへの投資環境が厳しさを増す中、メガバンク系VCが果たす役割への注目が高まっています。継続的な投資力とグループ連携による総合的なサポートを武器に、日本のスタートアップエコシステムを支える3社の投資担当者が銀行系VCならではの視点と戦略について語りました。

登壇者 三菱UFJキャピタル  執行役員投資第二部長  田口順一
みずほキャピタル  営業第1グループ長  眞鍋裕亮
SMBCベンチャーキャピタル  投資営業第一部長  中野哲治
モデレーター  日本経済新聞社  NIKKEI THE PITCH編集長  古山和弘

眞鍋氏「銀行員からキャピタリスト 多様な経験生きる」

古山皆さんのキャリアについて教えてください

田口新卒でコンサルに4年間いた後、今の会社に転職してきました。24年間ひたすらベンチャー投資をやっており、VC以外の仕事は本当にやりたくないと思っています。70歳くらいまでこの仕事を続けたいですね。

眞鍋銀行員として25年、そのうち直近13年でキャピタリストをやっています。プライベートでは実家の家業を手伝っており、みずほグループの副業制度第一号として認定されています。金融や人材に関わるサービスへの投資が多いのも、こうした多様な経験が影響しているかもしれません。

中野2008年にSMBC銀行に入行し、小口融資から数百億円規模のプロジェクトファイナンスまで一通りデット業務を経験しました。2016年からVCに移り、デットとエクイティがちょうど半々のキャリアになっています。このハイブリッドな経験が今の仕事に生きています。

古山各社の投資規模について教えてください

田口三菱UFJキャピタルは銀行本体の二次組合のファンドが15ファンドまで来ており、運用ファンド総額は1600億円です。現在新規投資を行っているファンドは、ライフサイエンス200億円、ジェネラル300億円の合計500億円で、年間110社から120社程度に投資しています。ステージはシードからレイターまで幅広く対応しています。

眞鍋みずほキャピタルは約40年強ベンチャーキャピタル業務を続けており、オールステージ・オールジャンルで投資しています。IT系だけでなく、鳥貴族やタマホームなど実業系の投資も行っているのが特徴です。機関ファンドとしての成長支援ファンドがメインですが、ベンチャーデットファンドやグロースファンド、資本戦略ファンドも運用しており、上場前後のシームレスな支援を実現しています。

中野SMBCベンチャーキャピタルは毎年約90件の投資を継続しており、新規投資が6割、追加投資が4割の内訳です。最近はセカンダリー投資にも力を入れています。社内に投資戦略部という営業斡旋に特化した部署があり、投資先の売上向上に直結する支援を行っています。

三菱UFJキャピタルの田口氏
三菱UFJキャピタルの田口氏

田口氏「景気に左右されない継続支援が不可欠」

古山なぜメガバンク系VCの道を選ばれたのでしょうか

中野フィナンシャルグループの総合力に大きなロマンを感じたからです。エクイティ投資だけでなく、デットファイナンス、証券、リースなど様々な機能を持つグループの力をフルに活用すれば、スタートアップエコシステムに大きな社会的インパクトを与えられると考えています。

眞鍋みずほの源流をたどると、今のお札の顔になっている渋沢栄一らが新しい産業を興してきた歴史があります。会社を立ち上げ、そこに資金や人材をシームレスに流して産業を創出するのは、本来、銀行の専売特許だと思っています。グループの中でも創業の志を体現している仕事だと自負しています。

田口メガバンク系VCの最大の強みは継続性です。私は24年間VC業務を続けていますが、リーマンショック時も投資を継続できたのは20社程度でした。スタートアップ支援はシードからレイターまで長期間かかるため、景気循環に左右されない継続した支援が不可欠です。

みずほキャピタルの眞鍋氏
みずほキャピタルの眞鍋氏

中野氏「ステージに応じデット・エクイティ使い分けて」

古山銀行カルチャーとVCカルチャーの違いについて、どのように感じていますか

中野デットとエクイティではビジネス構造が根本的に異なります。デットでは確実な財務諸表を基に判断しますが、エクイティでは仮説を含めた未来を見据える必要があります。ただ、銀行員には元来、企業の成長を支えたいというマインドがあるため、理解者や応援者は多いと感じています。
特にヘビーアセットでレイターステージの企業には、規模を作るためのデットファイナンスが不可欠です。東証の基準もあり、最終段階でのデット活用は必須になっています。企業には身の丈に合ったステージに応じて、エクイティとデットを使い分けてもらいたいと考えています。

眞鍋1人のキャピタリストが、企業のステージに応じてエクイティかデットかを客観的に提案できるのは、メガバンク系VCの強みです。エクイティの人間はエクイティで、デットの人間はデットで調達したがる傾向がありますが、会社のフェーズに合わせて最適なファイナンスを提案できます。
宇宙関連スタートアップでは、シードステージから4回のエクイティ投資を行い、その後銀行のシンジケートローンで50億円の調達まで一貫して支援した事例があります。デットを出す前に、どういう成長をしてきたか、経営陣がどのようなメンバーなのかという事業理解を、長年の投資経験から蓄積していたため、銀行と連携して数十億円規模の融資判断をサポートできました。

田口BtoBチャネルの広さを活かした事業連携や、海外展開を目指すスタートアップに対する支援も積極的に行っています。例えば、三菱東京UFJ銀行のアユタヤ銀行での商談会に投資先が参加するなど、グループ一体となった支援体制が整っています。

SMBCベンチャーキャピタルの中野氏
SMBCベンチャーキャピタルの中野氏

眞鍋氏「スタートアップ支援こそ銀行の王道」

古山組織内でVCというポジションはどのように見られていますか

中野9年前にVCに来た時は正直浮いていました。銀行内でVC志望を表明した際もざわつきがありました。しかし、9年経った今はそれほど浮いているとは思いません。デットとエクイティ両方を経験したハイブリッドな人材として、一定の付加価値があると考えています。

眞鍋私も同じような経験をしました。VCに行く前は大企業営業をやっていたので、「何を考えているんだ」と言われました。しかし、スタートアップ支援こそ銀行の王道だと思っています。13年キャピタルをやっていて、同期会では逆に羨ましがられます。好きなことを長く続けているのが顔に出ているようです。

田口私が転職してきた時は、グループ内でベンチャーという用語を知っている人が10人に1人いるかいないかの世界でした。今は銀行本体がベンチャーサミットを開催する時代になり、キャピタルが浮いているということは全くありません。公募制度でも何十人も手を挙げる人気職種になっています。

中野氏「田口さんのSNS発信力は素晴らしい」

古山お互いを意識し合っている部分はありますか

眞鍋最近「やられた」と思ったのは、フィンテック投資での取り組みです。6~7年前にマネーフォワードやfreeeなどに投資していたのですが、三井住友銀行でオリーブ、直近では三菱UFJでエムットのサービスが発表された時、「なぜ俺にできないのか、なぜ色が青じゃないのか」と悔しく思いました。当時の上司に「僕センスないですよね」と言ったのを覚えています。

田口私がやられたなと思うのは、みずほキャピタルさんがベンチャーデットファンドを自社で運用していることです。投資先にシームレスに支援できる武器があるのは良いなと思います。また、長くプリンシパルマネージャーを続けられている環境も羨ましいです。

中野田口さんの発信力は本当にすごいと思います。メガバンク系VCの中でこれだけ市場にアテンションを集められるのは、コンプライアンスギリギリのラインだと思いますが、本当に素晴らしいです。

田口若いスタートアップの経営者に会うと「三菱UFJキャピタルってあるんですね」と言われることが多く、1974年から事業を続けて何百社も上場させているのに知られていないことが悔しくて発信を始めました。
もともとVCは起業家が太陽で我々は裏方という意識が強く、発信やイベントはやっていませんでした。しかし、コーラルさんなどの独立系VCが発信力を高めてリードを獲得している状況を見て、私も開始しました。
メガバンク系VCがスタートアップと真剣に向き合っていることを若い経営者に伝えたいという思いで、コンプライアンスに配慮しながら社内のSNSガイドラインを整備して発信を続けています。現在フォロワーは9200人で、何とか1万人に届けたいと思っています。

中野氏「田口さんのSNS発信力は素晴らしい」

中野氏「大企業エース級人材の起業支援したい」

古山今後の展望について教えてください

田口24年間モチベーションは下がっていません。グローバル展開も含め、様々な世代の方が挑戦する時代において、メガバンク系VCが果たす役割は大きくなっています。長くこの業界にいる責任として、間違った方向に支援が行かないよう、スタートアップの皆さんに正しい方向での支援を続けていきたいと思います。

眞鍋2012年からこの業界に入り、基本的には右肩上がりの成長を見てきました。現在は過渡期で、これまでのような一本調子では行かない局面ですが、過去の先人たちが築いた歴史の流れを止めないよう、ターニングポイントをしっかり乗り越えていきたいと考えています。10年後、20年後にもう一度この場で話せるように、業界全体で向き合っていきたいです。

中野厳しい局面だからこそ、継続した投資と現実に向き合った活動が重要です。200億円、300億円規模で上場するスタートアップを作るには、起業家の経営力がより試されます。大企業のエース級人材、脂が乗ったプレイングマネージャーのような方が起業する際のサポート体制を整えていきたいです。営業斡旋などをパッケージ化して、一気に成長できるような仕組みを作りたいと考えています。これまでソーシャルゲームやIT関係では独立系VCに先を越された部分もありましたが、メガバンク系VCとして魅力を発揮していきたいです。