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スタートアップ支援、活路はアジアに NIKKEI THE PITCH CONNECT 全国イノベーション都市会議2026 動脈(下)

国内外のスタートアップエコシステムの拡大強化を目的として始動した「NIKKEI THE PITCH CONNECT」。8月3日に東京・高輪で開催されたキックオフイベント「全国イノベーション都市会議2026 動脈」には、財務省の小林剛也氏とJR東日本でスタートアップ支援策を担う会田均氏の2人が登壇した。成長するアジアの活力を取り込むことこそ、地方のスタートアップの成長にとって重要だとの見方で一致した。

NIKKEI THE PITCH CONNECT キックオフイベント「動脈」リポート(上)はこちらから

ADBの信託基金活用 地方発技術を世界へ

2027年5月2~5日、第60回アジア開発銀行(ADB)年次総会が名古屋市で開催される。アジア・太平洋地域を中心に69の加盟国・地域から、財務大臣や中央銀行総裁、企業経営者、市民社会団体まで、5000人規模が参加する見通しだ。日本での開催は2017年の横浜市以来10年ぶりとなる。開催準備室長を任されたのが財務省大臣官房秘書課の小林剛也氏だ。

小林室長は「日本の失われた30年は、イノベーションが起きなかったことが大きな原因だ」と述べた。ADB年次総会を舞台に日本のスタートアップの力を世界に発信し、高市首相が掲げる成長戦略を加速させたい考えだ。

ADBには日本政府が拠出する信託基金があり、これを活用することで日本のイノベーション技術をアジア地域に展開できるという。具体例として挙げたのが、鹿島がフィリピンで手掛けるサンゴ礁再生プロジェクトだ。さらに同氏は、今回の開催地が愛知県であることも踏まえ、「宇宙ベンチャーの天地人のような素晴らしいスタートアップを紹介し、アジアで老朽化が進むインフラ整備などの課題解決に貢献できることを示したい」と述べた。

天地人は、衛星画像を活用して上水道の漏水を検知する技術などを開発するスタートアップだ。天地人の衛星データ活用技術を導入した愛知県豊田市上下水道局の取り組み「水道DX~人工衛星とAIによる水道管の健康診断~」が、「Digi田(デジでん)甲子園2023」で地方公共団体部門の内閣総理大臣賞を受賞した。愛知県の豊田市でも、水道DXへの貢献が高く評価された実績がある。日本の起業家にとって、世界からの注目を集める大きなチャンスとなる。

小林室長は「ADB年次総会は名古屋で開催されるが、日本政府が招へいする会議だ。このイベントに参加する自治体が持つ優れたアイデアや人材、技術を、グローバルに展開できるようにしていきたい」と語った。山形県庁への出向の経歴を持ち、財務省官僚としてこの10年ほど地方創生に携わってきた小林氏。「今の地方の取り組みは素晴らしいレベルにある。地元の雇用や若者のチャンスにつなげていくことが重要だ。地域のイノベーションエコシステムに少しでも貢献したい」と話した。

品川圏からアジアへ 広がる共創の輪

JR東日本も、オープンイノベーションを通じた地方創生型のスタートアップ支援に、いち早く取り組んできた企業の一つだ。高輪ゲートウェイシティにあるディープテック等のスタートアップ支援施設「LiSH(TAKANAWA GATEWAY Link Scholars' Hub)」では、街全体を実証実験の場として提供するほか、ラボ施設としての利用や、さまざまなキャリアを持つJR東日本社員による伴走支援など、多面的な支援を展開している。

マーケティング戦略部広域都市創造ユニットの会田均氏は、これまでも地方創生につながるスタートアップ支援に取り組んできた。現在は広域都市創造ユニットのマネージャーとして、LiSHの運営に携わっている。「高輪は150年前に鉄道で大きなイノベーションが起きた地であり、これから100年先に続くソリューションを生み出せるようにしたい」(会田氏)。

高輪エリアは、1872年に新橋・横浜間で日本初の鉄道が開業した際、海上に線路を通すために「高輪築堤(たかなわちくてい)」が建設された場所だ。今回の再開発では、当時の石垣などが遺構として出土している。会田氏はこうした歴史的背景を踏まえ、交通インフラの動脈を担う鉄道会社として地域の点をつなぎ、東京で成長の機会を生み出していくことが重要だと説明した。

「小さな点をどうやって大きくしていくか。いろいろな人たちに協力してもらわなければ、大きくすることはできない。そのための共創の形を作っていきたい」と同氏は語る。すでにLiSHでは60を超える共創が実現しており、今後もこのペースを加速させていく考えだ。

JR東日本はシンガポール国立大学などとも連携しており、東南アジアの優れたスタートアップ企業の日本進出や、両地域での共創関係強化に取り組んでいる。今後は竹芝や大井町を含めた広域品川圏にイノベーションの輪を広げ、その成果をシンガポールなどアジアにも展開していく方針だ。

(左から)JR東日本 マーケティング戦略部広域都市創造ユニット マネージャー会田均氏・財務省 大臣官房秘書課 財務官室長 第60回アジア開発銀行年次総会 開催準備室長 小林剛也氏
(左から)JR東日本 マーケティング戦略部広域都市創造ユニット マネージャー会田均氏・財務省 大臣官房秘書課 財務官室長 第60回アジア開発銀行年次総会 開催準備室長 小林剛也氏

第60回アジア開発銀行(ADB)年次総会について詳しい情報は以下のサイトから
https://www.adb2027aichi-nagoya.org/

JR東日本のLiSHについて詳しい情報は以下のサイトから
https://www.takanawagateway-lish.com/