NIKKEI THE PITCHスタートアップ/アトツギベンチャー/
ソーシャルビジネス起業家/学生
支援プロジェクト

  • ホーム
  • ライブラリー
  • 公開メンタリングと知財戦略、起業家たちの現在地~オープンイノベーションフェスティバル EAST Day1リポート
公開メンタリングと知財戦略、起業家たちの現在地~オープンイノベーションフェスティバル EAST Day1リポート

公開メンタリングと知財戦略、
起業家たちの現在地~
オープンイノベーションフェスティバル EAST Day1リポート
スタートアップはどう成長するのか 公開メンタリングと知財戦略、起業家たちの現在地

「オープンイノベーションフェスティバルEAST」では、「NIKKEI THE PITCH GROWTH」東日本予選と並行し、スタートアップの事業成長支援を目的とするアクセラプログラムが開催された。12月9日に行われた同プログラムの最初のセッションは、スタートアップ起業家が抱える課題に対し、投資経験豊富なメンターが相談に乗ってアドバイスを送る「公開メンタリング」だ。

エイターリンク
ワイヤレス給電の事実上の標準を目指す

右からBDスプリントパートナーズの秦充洋代表取締役CEO、エイターリンクの岩佐凌代表取締役/CEO、モデレーターのNIKKEI THE PITCH古山和弘編集長氏
右からBDスプリントパートナーズの秦充洋代表取締役CEO、エイターリンクの岩佐凌代表取締役/CEO、モデレーターのNIKKEI THE PITCH古山和弘編集長氏

 公開メンタリングのメンティーは、「NIKKEI THE PITCH」の前身となるピッチコンテスト「スタ★アトピッチ」の第2回大会で決勝進出を果たしたエイターリンク(東京・千代田)の岩佐凌代表取締役/CEO。同社はスタンフォード大学発のディープテック企業であり、マイクロ波を利用したワイヤレス給電技術を開発する企業だ。ビジネスモデルについて、「現在は、OEM(相手先ブランドによる生産)が事業の主力だが、顧客の課題を解決するソリューション型ビジネスモデルを模索している」と岩佐氏は言う。それに対し、メンターを務めたBDスプリントパートナーズ(東京・湊)の秦充洋代表取締役CEOは、「OEM型はビジネスを拡大しやすい。黎明期にあるワイヤレス給電業界でエイターリンクがデファクトスタンダード(事実上の標準)とデジュールスタンダード(公的標準)を確立し、他社が追随できない状況を築いたうえでソリューション化を進めるのが理想的だ」と指摘した。

知財戦略はスタートアップの
事業成長のカギ

特許庁総務課企画調査課スタートアップ支援班長の湊和也氏
特許庁総務課企画調査課スタートアップ支援班長の湊和也氏

 知財の管理は企業のビジネスの保護・発展のために必要な実務であり、スタートアップにとっても例外ではない。アクセラプログラム2つ目のセッション「スタートアップのための特許実務セミナー」では、国による支援策の紹介や知財戦略策定の要諦が語られた。
 特許庁総務課企画調査課スタートアップ支援班長の湊和也氏は、同庁がスタートアップに対して行っている知財関連の事業を紹介。スタートアップ向け知財コミュニティ「IP BASE」や、ビジネスや知財の専門家がチームを組み、ビジネスモデルに紐付いた知財戦略策定を伴走する「IPAS(知財アクセラレーションプログラム)」などの概要を説明した。「すべての都道府県に知財総合支援窓口を設置している。疑問があれば気軽に相談してほしい。スタートアップに対しては、通常より短期間で特許審査を行ったり、手数料を軽減したりする制度も設けている」と、スタートアップへの支援体制を強調した。
 続けて講演を行った弁理士法人瑛彩知的財産事務所(東京・世田谷)の竹本如洋代表は、スタートアップのイグジットとしてM&A(合併・買収)が年々増加していることにふれながら、「起業家の頭の中にあるアイデアやデザイン、ブランドは、特許として登録することで初めての資産となる」とし、「知財戦略の策定は自分たちを守り、資産化し、資産を売り抜くための大事な活動の一つだ」と知財の重要性について解説した。

弁理士・米国弁護士(DC,NY)/弁理士法人瑛彩知的財産事務所の竹本如洋代表
弁理士・米国弁護士(DC,NY)/弁理士法人瑛彩知的財産事務所の竹本如洋代表

IPOはゴールではない
事業を通じて社会課題を解決する

右からBDスプリントパートナーズの秦充洋代表取締役CEO、エイターリンクの岩佐凌代表取締役/CEO、ASTRA FOOD PLANの加納千裕代表取締役社長、モデレーターのNIKKEI THE PITCH古山和弘編集長
右からBDスプリントパートナーズの秦充洋代表取締役CEO、エイターリンクの岩佐凌代表取締役/CEO、ASTRA FOOD PLANの加納千裕代表取締役社長、モデレーターのNIKKEI THE PITCH古山和弘編集長

 最終セッション「AFTER NIKKEI THE PITCH~私たちのこれから~」は、過去のピッチコンテストの参加者が自分たちの現在地をカジュアルに語り合うプログラムが行われた。「公開メンタリング」にも登壇した岩佐氏は、「『スタ★アトピッチ』に参加したことで、登壇者や審査員との縁が生まれた」とピッチコンテストの意義を語り、今後の事業について、「単なる金銭的な利益ではなく、自社の技術がどれだけ世の中に貢献できるかを重視し、IPOはそのための資金調達の手段である」と事業成長への意気込みを述べた。
 もう一人の登壇者は、「スタ★アトピッチ」第5回大会でグランプリを受賞したASTRA FOOD PLAN(埼玉県富士見市)の加納千裕代表取締役社長だ。同社は「隠れフードロスの削減」をビジョンに掲げ、食品の生産工程で排出される野菜の端材を乾燥・殺菌してアップサイクルする過熱蒸煎機の開発・製造などを主な事業としている。グランプリを獲得した影響について、加納氏は「日経新聞社が主催するコンテストで賞を獲得することにより、知名度と信頼性向上の効果があった。結果として、大企業との協業が加速した」と評価した。事業を進める中で、加納氏は「フードロスを減らすだけでなく作業効率の向上やコストダウンの効果を期待できる」ことに気づいたという。例えば、「タマネギを粉末化した『ぐるりこ』を調理過程に取り入れることで、じっくり炒めたタマネギと同じ風味を簡単に加えることができる」と加納氏は言う。今後の展開について、「ホップやリンゴの搾りかすなど、対応食材を広げる準備を進めている。過熱蒸煎機こそが社会課題の解決になることを信じ、IPOに向け事業を成長させたい」と展望を語った。
 本セッションのアドバイザーであり、「公開メンタリング」にも登壇した秦氏は、「IPOなどのイグジットを通過しても、会社としてのストーリーは続く。両者は、良い目線で未来を見ていると感じた」と視座の高さに感銘を受けていた。