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企業の新規事業担当者の「奮闘」を表彰 NIKKEI THE PITCH イントレプレナーアワード~NIKKEI THE PITCH Challenger

2026年3月6日に都内で開催されたイベント「NIKKEI THE PITCH Challenger」。メイン会場の最後のプログラムとして、企業内の新規事業担当者を表彰する「NIKKEI THE PITCH イントレプレナーアワード」が開催された。

アワードの審査基準は、周囲の反対を乗り越えて新たな事業創出に挑む「チャレンジャースピリット」、現場で汗をかき奮闘する「アクション&プロセス」、そして事業が企業や社会にもたらす価値を測る「インパクト」の3項目。新規事業立ち上げの際に直面した困難にどう向き合い、乗り越えたのか――。ファイナリストに選ばれた4人のプレゼンを紹介する。

地域の軋轢乗り越え特産品開発
 対話と合意形成で壁を突破

Challenger Spirit賞を受賞した、ENgaWA 新規事業開発責任者 村上悠剛氏
Challenger Spirit賞を受賞した、ENgaWA 新規事業開発責任者 村上悠剛氏

ENgaWA(エンガワ、埼玉県横瀬町)は、地域おこし協力隊員が中心となり、農業支援や商品開発、飲食店運営などを通じて地域経済循環の創出を目指す。同社の村上悠剛氏は、埼玉県主催の共創プログラム「Canvas」における取り組みについて発表した。

同社は大手総合卸売企業の国分グループと連携し、横瀬町のメープルシロップを使用した特産品の開発に着手した。「地域住民の間で軋轢(あつれき)が生じてしまい、事業の進行は一筋縄ではいかなかった」と村上氏は当時をこう振り返る。生産側の組合は資源保護のため高価格を求める一方、販売側は消費者に届けやすい価格設定を主張したのだ。

この課題に対し「試食会などの場を設けて、組合の会員や町長をはじめとした地域住民に対して、特産品づくりが森林保護にもつながるとアピールした」と村上氏は説明。対話と合意形成のプロセスが、地域との共創の鍵であることを強調した。

「タブー」だった共同養育を推進
 離婚に子どもを巻き込まない世界へ

インパクト賞を受賞した、りむすび 代表 しばはし聡子氏
インパクト賞を受賞した、りむすび 代表 しばはし聡子氏

2026年4月に施行された改正民法により、婚姻の状況にかかわらず、父母が協力して子を養育する責務が明文化された。りむすび(東京・渋谷)代表のしばはし氏は、法改正以前から離婚後の夫婦が共同養育することの推進に取り組んできた。

活動を開始したのは9年前。「当時、共同養育は行政においてタブー視されていた。理念の実現に向けて泥臭く活動するなかで、育児に積極的に参加する男性が増えてきた。共同親権を巡る議論も活発化し、状況が徐々に変化した」と振り返る。

共同養育の実現に向け、同団体が提供する支援は主に2つある。1つ目は、離婚後の共同養育に関する事前の取り決めをするサービスだ。弁護士やカウンセラーなどの専門家が介在し、裁判外で紛争を解決するADR(裁判外紛争解決手続)制度を利用する。

2つ目は、面会交流の連絡仲介だ。子どもを預かり、離れて暮らす親の元への移動を支援する。活動の過程では、父親と母親、双方の立場からSNS上で批判を受けた時期もあった。それでも、「離婚後に子どもが争いに巻き込まれない社会を目指し、共同養育支援事業の全国展開を進めていく」と志を述べた。

百貨店の価値を再定義
 異色のクリエイタービジネスに挑戦

Action & Process賞を受賞した、大丸松坂屋百貨店 DX推進部部長 岡﨑路易氏
Action & Process賞を受賞した、大丸松坂屋百貨店 DX推進部部長 岡﨑路易氏

大丸松坂屋百貨店(東京・江東)は、過去5年間で9つの新規事業を創出するなど、新たな取り組みに積極的な企業だ。なかでも異色の業態が、デジタル領域で作り手と価値を共創する「クリエイタービジネス」である。同社の岡﨑路易氏は、その中核となるインフルエンサー事業とメタバース事業について紹介した。

「インフルエンサー事業では、お菓子の魅力を伝える『おかたべ』と、伝統工芸の魅力を発信する『WAZA Studio』を運営している。SNSの総再生回数は7億5000万回を超えた」と成果を語る。メタバース事業では、島根県の伝統芸能・石見神楽をメタバース上で再現。優れたデジタルコンテンツを表彰する第31回AMD Awardで「リージョナル賞」を受賞した。

当初、百貨店運営企業がデジタルコンテンツ事業に取り組むことへの疑義の声もあった。岡崎氏は、その壁を乗り越えるため経営陣を巻き込み百貨店のビジョンを再定義。「百貨店の本質的な使命は、文化の創造と発信にある。情報発信の在り方をアップデートすべき」と上層部を説得し事業化へつなげた。

大企業からスピンアウト
 事業への共感の声を熱意に変えた

NIKKEI THE PITCH賞を受賞した、ReCute  CEO 山下萌々夏氏
NIKKEI THE PITCH賞を受賞した、ReCute CEO 山下萌々夏氏

ReCute(リキュート、東京・港)は、NTTドコモの新規事業プログラムからスピンアウトしたスタートアップだ。商業施設などに設置したボックスでヘアアイロンのシェアリングサービスを行っている。

新卒でNTTコミュニケーションズに入社した山下萌々夏氏は、社内の起業大学を受講。「共同創業者とビジネスモデルを立ち上げた。滑り出しは順調で、起業への熱意に火が付いた」という。社内ピッチコンテストでは落選したものの、外部からの資金調達に動いた。受講したプログラムは、VCから出資を受けることを条件にスピンアウトが認められたため、上司の許可を得る前にVCへの訪問を開始した。

しかし、出資者はなかなか現れなかった。共同創業者からはピボット(事業の方向転換)を提案されたが、山下氏は500人以上のユーザーにヒアリングを実施するなど地道な活動を続けた。「ヘアアイロンのシェアサービスに共感してくれた人たちの声に応えるためだった」と当時を振り返る。社内規程による事業終了の1週間前、ポーラ・オルビスホールディングスからの出資が決定。出向起業(在籍したまま起業すること)ではなくNTTドコモを退職し、ReCuteの事業に専念する道を選んだことに、山下氏の強い決意が表れている。

NIKKEI THE PITCH賞を受賞した山下氏は「大企業からのスピンアウトは、今後の日本におけるビジネス創出の新たな形となり得る。スピンアウトのロールモデルになると同時に、女性のエンパワーメントにつながる活動を続けていきたい」と語った。

NIKKEI THE PITCH賞を受賞した、ReCute  CEO 山下萌々夏氏