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ビジコン成功の鍵は事務局にあり 新規事業を育てる組織設計の実際① ANA×大東建託 ~NIKKEI THE PITCH Challenger

日本経済新聞社主催の「オープンイノベーションフェスティバル Final」内で「NIKKEI THE PITCH Challenger」が2026年3月6日に開催された。

大企業における新規事業創出の機運が高まっている。イベントでは、新たな事業を生み出す基盤となるビジネスコンテスト(ビジコン)の運営や社内プログラムをテーマに、事務局担当者が議論するセッションが設けられた。本記事では、ANAホールディングスと大東建託の取り組みを紹介する。

事務局と現場の温度差
 解決には周知とトップの関与が必要

ANAホールディングス 未来創造室 デジタル・デザイン・ラボ 野村健介氏
ANAホールディングス 未来創造室 デジタル・デザイン・ラボ 野村健介氏

「シン・事務局実務論 〜『祭り(ビジコン)のあと』事務局はどう戦い、どう事業を育てるか〜」と題し、ビジコン運営の要諦が議論された。登壇者は、ANAホールディングス 未来創造室 デジタル・デザイン・ラボの野村健介氏と大東建託事業戦略部イノベーションリーダー遠藤勇紀氏。

セッションは野村氏によるANAの取り組み紹介から始まった。同社は中長期的な企業価値向上を目的に、事業提案制度「Da Vinci Camp(ダヴィンチ・キャンプ)」を2021年度に開始した。グループ全社員から事業アイデアを募集し、採択後は専任で事業化に取り組んでもらう。

大東建託は建設や賃貸などの経営資源を活用した新規事業を募る制度を設けている。事業化ではステージゲート(段階的審査の仕組み)を厳密に管理しつつ、各段階の課題を「問題の検討」「買われるのか検証」などの理解しやすい言葉で一般化。評価基準を共有するとともに、応募のハードルを下げる取り組みを行っている。

ビジコンの課題として挙がったのは、事務局と現場の温度差だ。新規事業は企業に新たな価値をもたらす一方で、現場では負担増とネガティブに受け止められる場合もある。こうした「現場の冷気」に対し、野村氏は広報の必要性を指摘。「人材の引き合いも生じる。社内報などを通じて、事業の意義や成果を積極的に発信して理解の醸成を図っている」と述べた。

大東建託の遠藤氏は、現場の冷気の背景に「目標管理」の仕組みがあると説明した。同社の新規事業は既存アセットの活用が前提で、現場の協力が不可欠となるという。そのため「現場にとってはアドオン(追加)の目標となり負担が増える」と指摘。「実証実験に移行する前段階で、関連部門長や執行役員の合意を得ることを審査通過の条件としている」とし、部門トップの指示として業務に組み込むことで摩擦の回避につなげている。

撤退の基準を明確化
 起案者のキャリアを守る

大東建託 事業戦略部 イノベーションリーダー 遠藤勇紀氏
大東建託 事業戦略部 イノベーションリーダー 遠藤勇紀氏

新規事業は撤退と背中合わせだ。大東建託では撤退基準を「時間」で厳密に定める。「目標と時間軸を明確にし、到達しない場合には自動的に終了する仕組みを制度化している」と遠藤氏は説明した。

ビジコンの懸念点として両者が共通して挙げたのが、起案者のキャリアだ。野村氏は「新規事業は華やかに見えるが、実は茨の道だ」と指摘。遠藤氏も、厳しくチェックして安易に審査を通過させないことの重要性を強調した。大東建託ではビジコン審査員を社内に限定している。「外部審査員は事務局に配慮して評価が甘くなりがちだ。当社のアセットに熟知した社内の人間が、実現性の高い事業のみを通過させることで、起案者のキャリアを守れる」と説明した。新規事業の承認も、現場との関与が薄い取締役ではなく、執行役員レベルで決裁する体制としている。

最後に野村氏は「ビジコンの仕組みを自社の文化に適合させ、個人の熱意で組織を巻き込むことが重要だ」と語った。起案者の情熱と事務局による熱量の設計が成功へのヒントであると示し、企業のビジコン担当者にエールを送った。

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