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日本と世界のエコシステムがつながる場 東京からグローバル企業を創出する

「あらゆる挑戦者を応援する都市に変貌を遂げる」

東京都は、文化・スポーツ・学業などの様々な分野のチャレンジを後押しすることとしている。「SusHi Tech Tokyo(スシテック東京)」は、ビジネスの挑戦者であるスタートアップを支援する取り組みだ。2025年5月、東京ビッグサイトで、500社以上が集うアジア最大級のスタートアップイベント「SusHi Tech Tokyo 2025」が開催される。同イベントの注目すべきポイントを、東京都スタートアップ・国際金融都市戦略室イノベーション推進部長の片山和也氏に聞いた。

世界のエコシステムとの共創のきっかけに

「SusHi Tech Tokyo」について教えてください。

「Sustainable High City Tech Tokyo」を縮めた言葉で、高い技術力で持続可能な都市を東京から実現していくというコンセプトです。そのために大きな役割を果たすのが、最先端のテクノロジーやアイデアを組み合わせて社会を変えることができるスタートアップの力です。

「Sustainable High City Tech」の理念を実現するために行われる「SusHi Tech Tokyo 2025」はどのようなイベントなのでしょうか。

スタートアップが持つ技術やアイデアの社会への実装は、企業単独での実現は困難でしょう。資金を提供するベンチャーキャピタルや、販路や技術力を持つ大企業、行政機関などのステークホルダーが連携する必要があります。「SusHi Tech Tokyo 2025」は、東京だけでなく、日本、アジアをはじめ全世界から様々なプレイヤーが集まり、交流や商談を行うスタートアップが出展し、5万人以上の参加者を見込む、アジア最大級のスタートアップカンファレンスです。

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「SusHi Tech Tokyo 2025」の特徴は何でしょう。

「SusHi Tech Tokyo 2025」の大きな特徴の一つは、世界中の国・地域・都市が参加することです。今回は、26の国・都市等がパビリオンやブース出展を予定しており、スタートアップだけでなく、行政機関やエコシステムのキープレイヤーも来場します。エコシステムのハブとつながることによる交流の広がりは、新たな事業創出の可能性を高めることになるでしょう。日本企業の海外進出にもつながりますし、海外の最先端テクノロジーを国内に導入するための機会ともなるはずです。

東京だけでなく、日本全国のエコシステム、スタートアップが一堂に会してPRを行う「オールジャパンエコシステムエリア」を設けました。本エリアが、日本と世界の橋渡しの役割となることを目指しています。また、グローバルイベントとして、メイン言語を、世界のビジネスの共通言語である英語としているのもユニークな点です。前回は来場者の約4分の1が海外からの参加者でした。下手でもいいので恥ずかしがらずに英語でコミュニケーションをとる格好の機会ですよ。

「AI」「量子」「食」にフォーカス・オン

東京都では、「SusHi Tech Tokyo 2025」で多様なテクノロジーに関する議論を行うと発表しています。なかでも、小池知事は「AI」「量子」「食」にフォーカスすると言われましたが、どのような議論になるのでしょうか。

いずれも、都市の持続性に大きくかかわるテーマです。生成AIが登場し、またたくまにテクノロジーを語る上で欠かせないトピックになりました。ロボットや自動車、物流システムなどに組み込まれ、物理的な環境の中で動き回る「フィジカルAI」がすぐにも登場するでしょう。急激に進化するAIが私たちの暮らしをどう変えるのか、そのなかでスタートアップやイノベーションにかかわる人材がどのような行動を取るべきか議論を深めます。
「SusHi Tech Tokyo 2025」で行われるAIに関するセッションの中でも、コロナ禍で注目を集めた台湾のオードリー・タン氏のセッションに注目が集まりそうです。彼女が提唱している「プルラリティー」に関する議論をはじめ、公共財としてAIをどのように使っていくべきか、我々行政にとっても重要な示唆を得られるでしょう。

また、量子コンピューターは、実用化に向けて大きく前進しています。スーパーコンピューターでは時間がかかる複雑な演算をはるかに短い時間で処理できる量子コンピューターは、創薬や材料化学、労働力不足が深刻化する物流の最適化などに貢献します。ともするとエネルギーを大量消費するAIを、その超高速計算により支える、持続可能な社会の実現に必要な未来の技術であり、注目すべき分野だと思います。
セッションでは「一般社団法人 量子技術による新産業創出協議会」の島田太郎代表理事(株式会社東芝CEO)等を招いて、量子技術が導く持続可能な未来の都市像について話してもらいます。

食に関しては、2065年に、世界人口は100億人を突破すると国連は予測しています。全人類が十分な食糧を確保するための手段のひとつであるフードテックは、喫緊の課題を解決するものです。「SusHi Tech Tokyo 2025」では、持続的に食糧を供給するためにテクノロジーをどう利活用すべきかヒントを得られるセッションも予定しています。
一方、食は私たちの生活を彩る面も持っています。世界一ミシュランの星を持つレストランが多い美食の都市として知られる食の量の確保だけでなく、質、すなわち人類がいかにして美味しい食を楽しむかという議論を展開するにふさわしい場であると考えています。

都市の未来に示唆を与えるセッション・イベント開催

期間中、国内外から200人以上・80以上のセッションが実施され、40以上の大企業や国・地域・都市のパビリオン出展、その他イベントなどが行われるということですが、注目するコンテンツはありますか。

今年は、シンガポール最大手のVC、Vertex VenturesのキーロックCEOをはじめ、アジアの様々なキープレイヤーが登壇・出展します。ここにくればアジアのエコシステムを知り、キーパーソンとつながれる場にしていきたい。また、女性活躍をテーマに集中展開する「EmpowerHER Stage」など、 ダイバーシティー・エクイティー・インクルージョン(DEI)にも力を入れています。

個人的には、東京大学の藤井輝夫総長と東京藝術大学の日比野克彦学長によるセッションや、ユニセフのGIGAプロジェクト※のCEOクリストファー氏が登壇するセッションなどに注目しています。テクノロジーやビジネスなどの話題だけにとどまらない、広い視野に立った議論を展開するのが、SusHi Techの特徴でもあります。
※ユニセフによるインターネットアクセスの教育的格差をなくすプロジェクト

また、SusHi Tech Tokyo 2025は、ビッグサイトの会場内だけでなく、様々なプレイヤーの皆さんに約100のパートナーイベントを開催していただきます。世界中から集まるスタートアップやエコシステムプレイヤーの皆さんが、東京や全国に足を運んで、ネットワークを深めたり、食やエンタメといった日本の魅力を体験するなど、みんなで盛り上げていければと思います。

今年は起業家や投資家、研究者だけでなく家族や学生も参加できる工夫があるそうですね。

「SusHi Tech Tokyo 2025」では、週末に親子連れや学生が参加できる「パブリックデイ」を設けました。楽しみながら未来のテクノロジーに触れ、その可能性や、何かにチャレンジすることの楽しさを実感してもらえるよう、様々な企画を展開する予定です。未来のテクノロジーに触れた若者や子どもたちが、成長していつか自分たちでテクノロジーを生み出したり、起業して、またSusHi Techに戻ってくるような循環を起こしたいですね。持続可能な社会の実現を目指すプレーヤーが世界から集まる3日間となりますので、様々な方と交流していただければと思います。

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