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NIKKEI THE PITCH GROWTH 東京ブロックB予選大会リポート㊦

NIKKEI THE PITCH GROWTH
東京ブロックB

予選大会リポート㊦

日本経済新聞社が主催するスタートアップやアトツギベンチャーを支援する「NIKKEI THE PITCH」の東京ブロックBの予選大会で12月10日午後の後半パートに登壇した7社について紹介する。

東京ブロックB(後半・午後パート) 予選出場7社
Bocek⇒ポルタパーク⇒メディアエイド⇒モノリクス⇒やさしいロボット研究所⇒yuni⇒Legal AI(登壇順)

東京ブロックB予選のピッチ動画はこちらから。

Bocek
生成AI でワンストップ型業務改善システムを提案

沖村氏は生成AI技術で使い勝手の良い業務改善システムを提供している
沖村氏は生成AI技術で使い勝手の良い業務改善システムを提供している

Bocek(東京・港)は顧客向けに生成AI技術の導入を支援する企業だ。生成AIは戦略構築やマーケティングなど様々な部門で使われているが、同社はワンストップで提供でき、顧客企業に寄り添ったきめ細かな提供を強みとして、同社の生成AIプラットフォーム「Taskhub」を軸に顧客の効果的な活用を後押ししていく考えだ。

同社の沖村昂志代表取締役は「生成AIは思ったより現場で使われていないし、現場はあまり変わっていない。生成AIで定型業務は自動化できず、使える人と使えない人がいるのが課題だ」と指摘した。沖村氏は東京工業大学卒業後に起業し、特に生成AIの登場後には多くの企業での導入に関わってきた。それだけに生成AIを使うための課題を知り尽くしており、効果的な提案ができるという。

同社の生成AIプラットフォームであるTaskhubでは定型業務の効率化ができることが特徴だ。例えば、議事録作成、メール送付やデータ保存を一括で行える。取引先の情報検索から、紙の請求書のアップロード、照合などもできる。こうした使い勝手の良さが強みだとしている。社員の誰もが使いやすく、情報などを共有できるところにもメリットがある。部署を超えて同じシステムを使えるようになり、情報のやり取りも容易になるという。

ポルタパーク
世界の冷房電力需要の抑制へ 独自の冷却建材を世界で展開

中村氏は冷房で電力需要の拡大が大きな課題を引き起こすと警鐘を鳴らす
中村氏は冷房で電力需要の拡大が大きな課題を引き起こすと警鐘を鳴らす

ポルタパーク(東京・練馬)は、室温を快適に保つ空調機能性サンドイッチパネルの研究開発をしている。今後大きな増加が予測される冷房システムにおける電力消費の問題の解決を目指している。同社の中村拓樹代表は「2050年までにエアコンで使われる電力は3倍になる。一方、途上国ではまだ普及しておらず、これから爆発的に普及することは確実だ」と強調する。中村氏によれば、まだインドでのエアコンの普及率は1桁に過ぎないが、それでも世界2位の市場になっており、ここで普及が加速すれば、深刻な電力不足が起きかねないという。

そこで中村氏はインドなどを視野に独自開発の建材を世界へ展開する。同社の建材では特殊な蓄冷剤が入っており、それが28度で溶けたり凍ったりする仕組みだ。この建材で建物を覆えば、室内の温度上昇を抑制することができるという。ここで重要なのは、壁の外への放熱であり、これこそが同社の独自技術の強みだという。真空パネルの内側に少量の水が入っていて、それが気化して基板を冷やし、水蒸気として効率よく放熱できるという仕組みだ。

中村氏は自らの技術を世界の建材メーカーにライセンス供与して普及させたい考えだ。建材の寿命は30年としており、メンテナンスの手間も省けるという。

メディアエイド
巧みなSNSマーケで 美容医療業界への信頼向上

メディアエイドの石毛氏は「美容医療のユーザーに役立つSNS空間を作りたい」としている
メディアエイドの石毛氏は「美容医療のユーザーに役立つSNS空間を作りたい」としている

メディアエイド(東京・渋谷)は、SNSでのマーケティング支援で知られるスタートアップだ。今回は美容医療分野で新たな事業展開に乗り出すことにした。美容医療では急速に市場が広がる一方、利用者からの苦情なども増えており、業界として信頼回復が重要になっていた。美容医療を望むユーザーにとってメリットのあるSNS空間を構築しようとしている。

同社の石毛大哉取締役COOは「美容医療を信頼される産業にしたい」と強調した。国内の美容医療市場は現在、急速に拡大しているが、その一方で消費者からのトラブルの相談件数は年間で約5倍に急増している。同社では美容産業への理解を深めてもらうために数多くのインタビューを実施して、ユーザーを含めた業界全体にメリットのある解決策を提示しようとしている。

石毛氏によると、「美容医療は周囲に相談しづらく、情報が様々な場所に散在している。さらに広告やサクラのようなコメントが混在していることが問題だった」という。利用者のリアルな声にアクセスできないそれぞれのクリニックは信頼できるのか、価格が妥当なのかというリアルな情報が必要であり、そのために新たな美容医療特化型SNSを立ち上げた。

石毛氏は「ユーザーは施術の領収書が承認されない限りレビューが投稿できないという仕組みを作っている」と指摘するように、信頼性の低い投稿を排除している。クリニック側に対しても課金での優先表示を禁止している。さらに、「ユーザー同士でつながり、直接相談することも可能」という。収益モデルとしては美容医療の医師の手数料のほか、ユーザーからのサブスクリプション課金などを想定している。

メディアエイドでは21年の創業以来、SNSマーケティング事業を支援してきた。多くの企業での実績もある。今回は美容医療という産業をテーマにSNSを活用し、産業が健全に成長することで自社として収益拡大につなげられるようにしている。

モノリクス
物流の危機を解決する手になりたい 自動搬送ロボの効果的な活用

齋藤氏はロボット大手ができない技術に特化し、物流の現場を支える製品を提供している
齋藤氏はロボット大手ができない技術に特化し、物流の現場を支える製品を提供している

モノリクス(東京・文京)は自動搬送ロボットの効果的な活用を通じて、物流現場の負担を軽減する専用治具などを開発している。現在は国内で深刻な人手不足でもあり、物流クライシスとの指摘がなされている。物流倉庫では大量に運ばれる荷物の大半に人手が関わっており、これが物流の停滞が輸送コストの上昇を招いている。モノリクスの技術はこの課題を解決する製品を実用化している。

同社の齋藤紀之代表取締役は「私たちは物流の未来を支える手を作る会社だ」と強調する。具体的には物流現場に大量にある台車と搬送ロボットをつなぐ装置、つまり「手」となる器具を開発、提供している。物流現場では1日に何千台もの台車を人が押して運んで、帰りは手ぶらで戻るという非効率な作業を続けているという。もし、多くの台車を自動でけん引できるようになれば、生産性が飛躍的に向上するという。

ただ、大量にある台車に一個ずつアームをつけることは現実的にできるわけでもなく、傾斜や段差などを超えられない。このため、自動搬送機とかごを積める台車などをつなげて運べる様々な機器を開発している。

モノリクスは齋藤氏ら物流機器メーカー出身の3人で創業した会社だ。齋藤氏は「私たちの強みは、独自の技術と現場に根差した開発力だ」とし、「大手のロボットメーカーが手を出しにくい領域に特化して確実に成果を上げている」と説明する。自動搬送ロボットメーカーなどと密接に連携しており、物流の現場改善に一緒に取り組んでいることが強みとなっている。

やさしいロボット研究所
最高の休息を提案 仮眠支援ロボット「ナップ」

古澤氏はロボット開発者としては世界大会でも実績がある
古澤氏はロボット開発者としては世界大会でも実績がある

やさしいロボット研究所(東京・八王子)は様々なロボットを開発しているスタートアップだ。同社の代表取締役である古澤美典氏は現在、筑波大学大学院で睡眠支援ロボットの開発に取り組んでいる、国際的なロボット大会でも実績を残してきた。現在は「最高の休息」を提供する仮眠支援ロボット「ナップ」の事業展開に注力している。

古澤氏は「寝つきが悪い人でも快適に眠れるような成果が出ている」と強調した。同社のナップというロボットは優しく体をトントンと叩いてリラックスできるようにしてくれる。特徴はこのロボットの軽さであり、400グラムだ。もっちり、ふわふわした肌触りであり、リラックスできるという。これまでも様々な研究で、このロボットを使うと、仮眠実験で心拍数の有意な低下が認められているという。

古澤氏は「世界的にも快適に眠りたいという需要が見込める。今回のナップを使ってまず5万台、売り上げで約10億円を目指している」と説明する。

今後の事業展開では法人向けにもかなり力を入れていく方針だ。古澤氏は「オフィスで働く人が仮眠をとることも重要だし、健康増進にもつながるからだ」と強調した。ホテル業界から注目されているという。ロボット大国として様々なロボットが登場しているが、こうした生活に寄り添う優しいロボットも需要が間違いなく認められるだけに、今後も注目されそうだ。

yuni
AI活用の資源循環DXを開発 日本らしいリサイクル事業を世界展開

内橋氏は寝具のリサイクルなど資源循環分野のスタートアップの起業家として注目されてきた
内橋氏は寝具のリサイクルなど資源循環分野のスタートアップの起業家として注目されてきた

yuni(東京・渋谷)は様々な資源循環DXサービスを展開するスタートアップとして注目されてきた。同社の創業者である内橋堅志代表取締役CEOは国内で大量に廃棄される寝具の効率的なリサイクルを実現している。現在はAIを活用し資源である廃棄物の取引が円滑に進むような資源循環DXサービスも展開している。

内橋氏は「日本は資源がない国である一方で、多くのゴミが捨てられている。再生する技術を発展させ、再生素材を利用する企業が増えている。焼却するより、再生のコストを下げ、それを社会に実装していく」と強調した。

同社は寝具の回収と再利用で大きな成果を出してきた。寝具は年間1億枚が廃棄されているといわれ、寝具のマテリアルリサイクル技術の開発に取り組んできた。国内では自社でリサイクルの工場を運営して、良品計画などに提供している。この分野の資源循環の社会実装に大きく貢献している。

内橋氏が注力しているのがAIを活用した資源循環DXサービスだ。資源である廃棄物の売り買いを円滑にできるクラウドサービスであり、売り手と買い手がそれぞれを見つけられやすくなる。リサイクルしたい廃棄物を簡単に探せたりする。どこで買ったらよいのかとかのマッチングがAIにより簡単に分かるような仕組みになっているという。廃棄物分野の業者とマッチングさせるため独創的なサービスだ。

内橋氏は「日本人はゴミの分別とかにもきちんと取り組んでいる。この良さを生かし、日本での資源循環ビジネスを世界でも広げていきたい」と強調した。

Legal AI
AI弁護士で泣き寝入りを防ぐ社会を目指す

渡部氏はAI弁護士は法人向けにも需要が見込めるとしている
渡部氏はAI弁護士は法人向けにも需要が見込めるとしている

Legal AI(東京・文京)はAIを活用して誰もが公平に司法にアクセスできるような社会を目指している。同社の渡部薫代表取締役によると、国内では裁判で多くの問題があり、泣き寝入りせざるを得ないケースが非常に多いという。それは弁護士が見つからないことや、弁護士への支払いが高額だったり、裁判に時間がかかったりするという理由だ。同社はAIを活用して、様々な裁判でのサポートをすることで、割安かつ丁寧にAI弁護士が相談に乗ってくれて裁判ができるようになるという。

渡部氏によれば、「すなわち裁判を断念せざるを得ない人々が100万人規模で存在している」という。同社では様々な法律分野において、まずAIが弁護士となって手助けする事業だ。裁判の見通しを立てて多くの書面を短い時間で作成できる。ただ、AI弁護士が本当の裁判に出廷することはできないので、本物の弁護士とのハイブリッド型でサービスを提供する。AI弁護士は多くを学習しており、深い知識がある。このため、裁判をする前に勝訴などの可能性を見極めることにもつながる可能性がある。

同社では現在、法人向けにAI弁護士サービスの導入に注力している。企業の法務部にとっても有効だからだ。優秀なリーガルアシスタントとして活用が可能だ。さらに弁護士事務所も顧客としている。AIが司法の分野も変える可能性があり、今後の行方が注目されそうだ。