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賃貸×宿泊 唯一無二のビジネスモデルで日本の暮らしにイノベーション起こす

賃貸×宿泊
唯一無二のビジネスモデルで日本の暮らしにイノベーション起こす

NIKKEI THE PITCH GROWTH 2025-26 レオス・キャピタルワークス賞

日本経済新聞社が主催する「NIKKEI THE PITCH GROWTH」の決勝大会で「レオス・キャピタルワークス賞」に選ばれたのは、「暮らしの最適化の追求」をビジョンに掲げるUnito(ユニット、東京・目黒)だった。同社が生み出した「リレント(Re-rent)」は、賃貸物件に住みながら留守の日だけ宿泊者に部屋を貸し出し、その分だけ家賃が安くなる仕組みだ。賃貸と宿泊を併用した新たなビジネスモデルは、人口減少・資材高騰・金利上昇に直面する日本の住まいや暮らしの在り方を変える大きな可能性を秘めている。

賃貸物件のサブスクで注目
 「暮らし」で社会課題に挑む

人口減少に伴い、今後空き家がさらに増加すると言われる一方で、首都圏の不動産市場ではマンション価格や賃貸物件の家賃が上昇している。同社が目指すのは、暮らしの基盤である住宅の最適化だ。その実現に向け、足元では都心の賃貸物件の家賃負担を軽減させ、環境の良い地方との2拠点生活を促すためのサービス展開に取り組んでいる。

代表取締役CEOの近藤佑太朗氏は表彰式で「リアルアセットとテクノロジーを掛け合わせて新しい暮らし方を作りたい。社会が変化し、働き方がさらに多様化するなかで、住宅のあり方を大きく進歩させ、暮らしのイノベーションの担い手として頑張っていきたい」と語った。

レオス・キャピタルワークス代表取締役社長の藤野英人氏は「地方の人口減少や首都圏の人口集中といった社会課題に対して、暮らしという切り口で素晴らしいソリューションを提供している。日本のより良い発展に貢献する夢のビジネスだ」と評価した。

レオス・キャピタルワークス代表取締役社長 藤野英人氏と、Unito 代表取締役CEO近藤佑太朗氏
レオス・キャピタルワークス代表取締役社長 藤野英人氏と、Unito 代表取締役CEO近藤佑太朗氏

稼働率は90%
 入居者・宿泊者の利便性が高評価

同社が確立したのは、「賃貸×宿泊」というアセットのビジネスモデルだ。リレント(Re-rent)とは、入居者が不在にする日程を3日前までにアプリに登録するだけで、Unitoが宿泊者を募集し、その日数分だけ家賃が自動的に減額される仕組みだ。ビジネスモデルとして特許も取得している。留守中、入居者の私物は専用の鍵付きロッカーに保管でき、宿泊者の利用後は清掃サービスが入って部屋を整えてから入居者に返却される。家賃には光熱費も含まれており、ホテルに暮らすように住めることがメリットだ。

Unitoのビジネスは、世界的な民泊大手のエアビーアンドビー(Airbnb)と似ているようにも見えるが、近藤氏は「私たちはBtoBtoCモデルであり、根本的に違う」と話す。まず三井不動産や東急不動産など不動産大手や海外の不動産ファンドと提携し、家具付きのワンルームや1LDKの物件の運営を受託する。Unitoは自社で物件の借り手を探し、不在の日は宿泊者がホテル予約サイトのように簡単に申し込めるようにしている。借り手・宿泊者への苦情対応を含む顧客サービスや清掃も一括して担っている。

入居者にとっての使い勝手も工夫されている。リレント物件を借りる際の初期費用はエリア・物件によって変動するが4万〜5万円程度が多く、敷金や礼金は不要だ。退去する際は20日前に通知するだけで契約を終了できる。気軽に賃貸物件を契約でき、簡単に宿泊用に貸し出すことができる使いやすさが評価され、稼働率は90%を超える高水準を維持している。

物件オーナーの収入増加も
 不動産開発の新たな選択肢目指す

Unitoが現在不動産会社などから運営を任されているリレント物件は、130棟・1200室にのぼる。着実に物件数が増えてきた背景には、このサービスが、オーナー側にも収入拡大につながるビジネスモデルだからだ。

決勝大会で同氏は、リレントビジネスは賃貸の借主だけでなく、物件のオーナーにもメリットが大きいと説明した
決勝大会で同氏は、リレントビジネスは賃貸の借主だけでなく、物件のオーナーにもメリットが大きいと説明した

例えば、都心の平均的な月額15万円のリレント物件で、借り手が10日間留守にした場合、1日4000円が減額されて入居者の支払いは11万円になる。この10日間を1泊1万2000円で宿泊に回せると、宿泊収入は12万円になる。光熱費や清掃費などを差し引いても、物件オーナーの収入は18万円前後となり、通常の賃貸より増える仕組みだ。

最近では、都心の設備が充実したマンションで月額家賃が27万円程度の場合でも、宿泊料金を高く設定することで不動産会社の実質収入が家賃を大きく上回るケースも出てきているという。近藤氏は「不動産会社にとってマンションの建設費が膨らんでおり、リレント物件が投資採算的に魅力的になっている。まだまだリレントは知名度が低いが、いずれは都心での不動産開発ではホテルか、マンションか、あるいはリレント物件かという選択肢に入れてもらえるようにしたい」と強調した。

基幹システムとダイナミックプライシングで高稼働を実現

Unitoの競争力の中心は、賃貸と宿泊を組み合わせた独自の基幹管理システムにある。借り手が留守の日を簡単に登録して宿泊者を募集できるシステムを構築。また、宿泊サイト大手と連携して需要に応じて価格が変動するダイナミックプライシングも活用している。物件のオーナー側はリレント物件の稼働状況をリアルタイムで確認でき、細かい報告書の作成も自動化されている。

賃貸物件の予約などの基幹システムが同社の事業を支えている
賃貸物件の予約などの基幹システムが同社の事業を支えている

もう一つの強みが清掃体制だ。各地域で優秀な清掃スタッフを確保し、高い時給を設定することで質の高いサービスを維持している。「普通の不動産管理会社の場合、電話してもなかなかつながらないことがあるし、平日の営業時間も限られている。当社は、常時1〜3人の専属スタッフが顧客からの相談を24時間365日受け付ける体制を整えている」(近藤氏)

きめ細やかなサービスが評判を呼び、リレント会員は8万人を超えた。都心などの物件をホテルとして利用する固定客も安定的に確保できているという。

住みやすい環境整備のため、優秀な人材の採用に注力し、清掃体制を整えている
住みやすい環境整備のため、優秀な人材の採用に注力し、清掃体制を整えている

基幹システムを外販
 他社参入で市場のすそ野広げる

年間の賃貸住宅市場は50兆円規模とされている。この巨大市場でわずか1%をリレント物件にできれば、それだけで5000億円規模の市場になる計算だ。近藤氏は、市場拡大のためにはUnitoだけが物件を持つのではなく、他社の参入を促して市場を活性化させることが重要だと考えている。

Unitoは2026年の夏頃に、これまで蓄積してきたノウハウを結集した賃貸と宿泊を組み合わせた基幹管理システムを外販する予定だ。このシステムがあれば不動産会社もリレントビジネスに参入しやすくなる。市場全体の知名度向上と競争の活性化を同時に狙う戦略だ。

現在運営する物件の不動産価値は700億円規模で、今後3年間で売上高100億円を目指している。大手不動産会社との関係も強化が進んでおり、今後3年で40棟の新築リレント物件の運営受託が決まっている。現在130棟のうち新築はわずか5棟だが、この新築物件が増えることでリレントビジネスをさらに成長させられるとみている。「まだ先のことなので見通せない部分もあるが、1兆円規模なら手掛けるリレント物件は2万室程度になるかもしれない。アパホテルの部屋数は国内で11万室とされる。リレント物件でもこれぐらいの市場にはできるのではないか」と語り、2035年には不動産価値で1兆円規模への引き上げを目指す考えを示した。

原点は幼少期のルーマニア
 学生時代から観光関連の起業に挑戦

近藤氏が起業家を志した原点は幼少期にある。父親がルーマニアの日本人学校の教師として赴任したため、1997年に3歳でブカレストに家族と移住し、3年半を過ごした。旧社会主義国として貧困に苦しむ人たちを目の当たりにし、「自分が日本人として生まれたからこそ、多くの挑戦ができる」と強く感じたという。

明治学院大学在学中から起業家志向が強く、インバウンドの外国人客向けガイドなどをしていた。近藤氏は「浅草の刃物店に連れて行っただけで、すごく喜んでもらい、チップを1万円ももらったことがある。人々を喜ばせる観光業をベースとしたビジネスをしていきたいと思った」と振り返る。大学3年時には観光大国として知られるクロアチアに留学し、帰国後はAirbnb Japanでインターンを経験。その後、古民家を再生して多拠点生活を提案するスタートアップを立ち上げた。

ただ、なかなか成功せず、2019年に7000万円で事業を売却することになった。資金調達で1億円の借金も抱えていた。自ら起業家として多忙な日々を送る中で、都心の賃貸に戻れない日が続いて「もったいない」と感じたことがUnitoのビジネスを思いつくきっかけとなり、2020年にサービスを立ち上げた。

リレント物件は当初、コロナ禍で鳴かず飛ばずの状態が続いた。起死回生となったのは、観光客が来なくなった都心の高級ホテルを住居として貸し出すサービスだった。これが成功し、2023年以降は不動産大手との提携を相次ぎ実現してリレントビジネスを着実に拡大させてきた。

リレントが広げる
 多様な生き方に寄り添う住まいの最適解

近藤氏にとって、NIKKEI THE PITCH GROWTHが久しぶりのピッチ大会だった。会社の事業規模の拡大に伴い、社会からの信頼をしっかり得てビジネスを進めたいという思いを抱いたという。現在の賃貸住宅では借り手へのサービスが十分でない場面も多く、水回りの故障のような困りごとへの相談対応も含めて、より良い暮らし方を提案できると近藤氏は自信をのぞかせる。

「今は都心の賃貸物件の家賃が高いという課題に取り組んでいるが、今後は暮らしに関わる多くのことにも挑戦していきたい」とも意気込む。リレントビジネスは、政府が注力する地方での関係人口の拡大にも貢献できる可能性がある。将来的には、人口が急速に減少し働き方がより多様化していく中で、地方の空き家をうまく活用し、欧州のように誰もが気軽に別荘を持って環境の良い地方でも暮らせるようなビジネスにも挑みたいという。「リレントビジネスを拡大させることで、また別な暮らしの最適化へのビジネスに挑戦していきたい。やるべきことはたくさんある」と語った。

日本では借地借家法の問題があり、賃貸に長く住み続けるという文化が1950年代から根付いてきた。しかし今後は、終身雇用を前提に30年ローンで住宅を保有するという選択肢も変わっていくだろう。同社が切り拓いた市場を拡大・活性化させ、より激しい競争の中でサービスの質を高めていくことこそが、リレントビジネスの普及につながる。その先に、同社が掲げる暮らしの最適化の未来があるだろう。

日本の不動産に長く住み続けるという暮らし方の文化を変えようとしている
日本の不動産に長く住み続けるという暮らし方の文化を変えようとしている