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継続参加が成果を生む ビバテック、それぞれの視点 VivaTechnology 2026 帰国報告会

8月6日、NIKKEI THE PITCHはスタートアップやテックのカンファレンス・VivaTechnology(ビバテクノロジー)の帰国報告会を、東京都のスタートアップ支援拠点・Tokyo Innovation Base(TIB)で開催した。スタートアップ・金融機関・自治体関係者らおよそ100人が集まった。報告会では、それぞれの立場から見たビバテックの感想や成果を共有。海外展示会を協業・ビジネスマッチングにどうつなげていくか議論が交わされた。

東京都 スタートアップ戦略推進本部の寺尾悟氏。冒頭あいさつでは、「日本市場への期待や関心の高まりを感じた。この機会を捉え、ビジネスにつなげていくことが重要だ」と述べた
東京都 スタートアップ戦略推進本部の寺尾悟氏。冒頭あいさつでは、「日本市場への期待や関心の高まりを感じた。この機会を捉え、ビジネスにつなげていくことが重要だ」と述べた

複数回の参加で見えてきた成果

愛媛県松山市に本社を置くユナイテッドシルクは、国産シルクから作った粉末を用いた食品や化粧品の開発・提供を行っている。3年前、シルクの粉末から樹脂をつくるというコンセプトを抱いてビバテックに参加したところ、海外企業を中心にアイデアに関心を持ってもらうことができた。その後、資金調達をして樹脂生産のための工場を設立した。代表取締役社長の河合崇氏は、「3回目の参加となる今年は、シルクで作った実際の商品であるめがねを持参した。これまで以上に具体的な商談を行うことができた」と成果を語った。

ヘラルボニーは、主に知的障害のある作家が描くアート作品を使った商品制作や空間装飾を手掛ける。Global Partnership Leadの山崎由佳氏もまた、複数回参加することの手応えを語った。

ブースでは、事業会社・投資家・学生など参加者の属性に応じた適切な説明をするように心がけていたという。LinkedInのQRコードをブースで読み込んでもらうなど、その後の関係構築も意識した。2年目には、ビバテック主催のVIPツアーが、規定のルートを外れて同社のブースを訪れるといった一幕もあった。「出展社が多い分、自分たちが埋もれてしまっている感覚があった。初年度は結果が出なかったが、フォローアップを粘り強く続けるなかで、具体的な商談につながってきているとここ数カ月で実感している」(山崎氏)

左から、ユナイテッドシルク 代表取締役社長 河合崇氏、ヘラルボニー Global Partnership Lead 山崎由佳氏、ONESTRUCTION 広報 佐藤日向子氏
左から、ユナイテッドシルク 代表取締役社長 河合崇氏、ヘラルボニー Global Partnership Lead 山崎由佳氏、ONESTRUCTION 広報 佐藤日向子氏

ONESTRUCTION(ワンストラクション)は2020年に設立された、建設DX・AXに取り組む鳥取大学発ベンチャーだ。年間20件程度の国内外の展示会に参加しており、ビバテックへの出展は今年が初めてだった。広報担当の佐藤日向子氏は、「ブース来訪者や商談件数を増やすため、LinkedInを活用して事前にアポイントを取るなど工夫した」と話す。フランス商工会議所からも丁寧にヒアリングを受け、現地で多くのネットワークを紹介してもらったという。

海外の展示会では、言語の翻訳だけでなく、文化そのものの翻訳が必要になる。日本で評判が良いものが、海外では必ずしも受け入れられるとは限らないという点は、注意すべきだという声もあった。河合氏は「日本の展示会に比べて、よりロングタームでの効果を意識させられた。中長期的な観点でビバテックへの参加を捉えたほうがよい」と、国内展示会との違いを指摘した。

一方で佐藤氏は、「海外の展示会も、遠く離れた国のよくわからないイベントではない」と語った。現地で最大限の成果を得るためにはインターネットでの事前の情報収集と入念な準備が欠かせないと述べ、セッションを締めくくった。

モデレーターのMTG Ventures・地域と人と未来 パートナー 松渕祐也氏。地域と人と未来では、地域課題を解決するシード特化型ファンド「Central Japan Seed Fund」を運営している
モデレーターのMTG Ventures・地域と人と未来 パートナー 松渕祐也氏。地域と人と未来では、地域課題を解決するシード特化型ファンド「Central Japan Seed Fund」を運営している

隣のブースが生んだ協業 リアルな場の力

世界中の最先端の技術やサービスに触れられるのは海外展示会ならではだ。出展をする、会場を歩いて出展企業を見て回る――。目的は様々だが、現地での偶然の出会いから協業が始まる例もある。

今年、アシックスはビバテックで、韓国のRebuilderAIとの協業の内容を発表した。RebuilderAIは、画像から簡単に3Dモデルを作成できるAIソリューションを手掛けるスタートアップだ。同社との出会いは、2025年1月に米ラスベガスで開催されたCESで、出展ブースが隣同士だったという偶然によるものだった。「そこから数カ月後には本格的に協業を開始した。最先端の技術を作っている人に直接会うことができるのが展示会の良さだ。リアルの場が持つ力を感じた」と高島慎吾マネジャーは振り返った。

ヤマトホールディングスは、自社のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の「クロネコイノベーションファンド」の運営や海外ファンドへのLP投資を通して、既存事業とシナジーを生むスタートアップの発掘を目指している。同社はビバテックを含めた展示会を、投資先のスタートアップの認知拡大の場と捉えている。今年のSusHi Tech Tokyoに出展した同社の投資先のスタートアップ7社のほとんどが、次のビジネス創出につながる接点をつくることができたという。

ソニーで新規事業創出支援を手掛ける中田了氏は、マッチングの手段は展示会に参加して広くリサーチする「プッシュ型」と、実際に出展して、ブース来訪者とコミュニケーションをする「プル型」があるとした。「ビバテックには『プッシュ型』で参加し、エンターテインメント関連のスタートアップをリサーチした。良いマッチングには質と量の両方が必要。目的に応じて使い分けることが重要だ」と話した。

ソニーグループ Open Innovation and Collaboration部 Boundary Spanning Team 統括課長 中田了氏(右)
ソニーグループ Open Innovation and Collaboration部 Boundary Spanning Team 統括課長 中田了氏(右)

「まず自分たちで動く」 事業部を巻き込む実践知

ビジネスマッチングを目指す大企業やCVCにとって、海外スタートアップと事業のスピード感を合わせることは容易ではない。セッションでは、海外展示会で見つけてきた協業の種を自社に持ち帰り、実際の形にしていくための実践知も共有された。

ヤマトホールディングスは、参加した展示会の内容を「訪問記」として社長含めた役員全員に配布して、社内の別部署を巻き込んでいる。また、見つけてきた案件はすぐに事業部に渡さず、まず自分たちの部署で動くことを意識している。イノベーション推進機能の森憲司マネジャーは、「事業部に『やってくれませんか』とお願いするのではなく、まずは我々から取り組む。成果が出てくれば自然と事業部が動いてくれるようになる」と話した。

ゴールドウィンベンチャーパートナーズの竹岡紫陽代表取締役は、展示会への参加目的やアプローチしたいターゲットが明確である場合は、イベント本体だけでなくサイドイベントに参加することも有意義だとした。「投資家限定のイベントなどもある。サイドイベントは招待制や事前承認制のものが多いため、事前に情報収集しておくべき」と話した。

左から、ヤマトホールディングス イノベーション推進機能 マネジャー 森憲司氏、アシックス スポーツ工学研究所アスレチック機能研究部 バーチャルヒューマン研究チーム マネジャー 高島慎吾氏、ゴールドウィンベンチャーパートナーズ 代表取締役 竹岡紫陽氏
左から、ヤマトホールディングス イノベーション推進機能 マネジャー 森憲司氏、アシックス スポーツ工学研究所アスレチック機能研究部 バーチャルヒューマン研究チーム マネジャー 高島慎吾氏、ゴールドウィンベンチャーパートナーズ 代表取締役 竹岡紫陽氏

オールジャパンで存在感示す

今年、ビバテック内のジャパンパビリオン「JAPAN VILLAGE」には7つの自治体とNIKKEI THE PITCHを含む2つの団体が出展した。最後のセッションには、ビバテックのスタートアップの出展や現地でのネットワーキング支援を手掛けた、東京都・京都市・大阪市の担当者3人が登壇した。東京都スタートアップ戦略推進本部の原雅之課長代理によれば、今年のJAPAN VILLAGE全体で約1万3000人の来場があったという。オールジャパンで打ち出すことで、日本の存在感を示すことができた。

京都市は、海外大型展示会への出展支援に加え、海外企業を対象とした京都市内の企業の視察ツアー「Tech Tour Kyoto」などアウトバウンド・インバウンド双方の支援を手掛ける。ビバテックの参加は2回目となった今年は、京都府などと連携して「JAPAN VILLAGE」内に京都ブースを設置。4社のスタートアップを連れていった。同市産業観光局の塩山氏は、「あるスタートアップからは、『会いたかった人のほとんどに会えた』と言われた。スタートアップの満足度は高かった」と話した。

大阪市は、同市のイノベーション創出拠点「OSAKA INNOVATION HUB」の会員のスタートアップから公募で選出した2社と共に、今年初めて参加した。大阪産業局の野崎麻衣氏は、「想定以上に多くの人にブースに来てもらえた。関西スタートアップの技術力や研究シーズの可能性を感じることができた」と語った。今後に向けては、出展サポートだけでなく、その前後まで含めた一貫した支援・協業促進に向けたプログラムも始めていきたいとした。

左から、東京都 スタートアップ戦略推進本部 プロモーション推進部 プロモーション推進課 課長代理 原雅之氏、京都市産業観光局 スタートアップ・産学連携推進室 塩山茜子氏、大阪産業局 スタートアップ支援事業部 マネジャー 野崎麻衣氏
左から、東京都 スタートアップ戦略推進本部 プロモーション推進部 プロモーション推進課 課長代理 原雅之氏、京都市産業観光局 スタートアップ・産学連携推進室 塩山茜子氏、大阪産業局 スタートアップ支援事業部 マネジャー 野崎麻衣氏

「支援の取り組み知ってほしい」情報収集呼びかけ

東京都が出展支援した15社に対して実施したアンケートによれば、出資や協業の相談など、今後のビジネスにつながりそうな商談の件数は約500件だった。「昨年は12社を連れて行き、商談件数は60件だった。着実に成果が出てきている」(原氏)

ビバテックの場合、スタートアップが単体で出展をエントリーしても、受理されずに選考から漏れてしまう難しさがある。自治体が提供する海外出展の枠組みを活用することで、スタートアップは「オールジャパン」の一員として自らをアピールできる。自治体は、ビバテック以外の海外展示会の出展募集や、独自のアクセラレーションプログラム、ピッチコンテストなど、多様な取り組みを行っている。原氏は、「公募に関する内容はホームページを見てほしい。エントリーの際にはしっかり実績を書いてほしい」と、スタートアップに積極的な情報収集を呼びかけた。

帰国報告会の参加者や登壇者からは、「海外と日本のリアルな差が分かった」「協業先が見つかった。実現に向けて上長へ提案する」という声が聞かれた。ビバテックは、大企業側が課題を提示し、その解決のためのスタートアップを集めるという特徴がある展示会だ。組織の意思決定者が将来のビジョンや価値観を共有する場であることが、スタートアップに限らず世界中の企業を引き付けている。原氏は「日本企業も、より多くの意思決定者に現地へ行ってもらいたい」と来年に向けての期待を語った。