NIKKEI THE PITCH

  • ホーム
  • ライブラリー
  • 高校生が国会議事堂で本気の提言 政策甲子園 全国1010チームから会頭賞決定
高校生が国会議事堂で本気の提言 政策甲子園 全国1010チームから会頭賞決定

2026年8月20日、日本青年会議所(日本JC)が主催する「第4回全国高校生政策甲子園(政策甲子園)」の決勝大会が開催された。政策甲子園は、高校生が地域や社会の課題を発掘し、解決策を発表する全国規模の政策コンテストであり、全国47都道府県から過去最多となる1010チーム(計3045人)の高校生がエントリーした。決勝大会では、全国10地区の予選を勝ち抜いた20チームが、国会議事堂で政策提言のプレゼンテーションを行った。「設定テーマ」の会頭賞には九州地区代表の精道三川台高校(長崎市)のチームが、「自由テーマ」の会頭賞には北陸信越地区代表の佐久長聖高校(長野県佐久市)のチームが、それぞれ選ばれた。最優秀賞は、決勝大会に進出した全国20チームを対象に、9月1日から実施するインターネット投票で決定する。

日本JCの加藤大将会頭は「政策甲子園は、高校生の皆さんが地域の社会課題の解決に向けて何ができるかを政策として考え、発信する場として成長してきている」と述べた。決勝進出できなかったチームを含めて、高校生の主権者意識の向上や挑戦の場になっていると語った。講評を担当した菅原啓太副会頭も、「地元に戻ったら、周りの人にも火をつけて、一緒に行動してもらいたい」と激励した。

ブルーカラーの地位向上を 専門技能教育の充実など提案

会頭賞に輝いた精道三川台高校チームと、日本JCの加藤会頭(左)
会頭賞に輝いた精道三川台高校チームと、日本JCの加藤会頭(左)

設定テーマ部門のお題は、「希望の就職や働き方を実現!若者が安心して社会に出られる政策」。将来に不安を抱く若い世代が希望を持って社会に踏み出し仕事ができる提案を求めた。会頭賞を受賞した精道三川台高校のチームの政策は「ホワイトカラーからブルーカラーへの移行」だ。チームは、「日本の老朽化インフラ対策などを担うブルーカラーの地位を高めたい」と訴えた。

具体策として、フィジカルAIによるロボット操作などを想定した技能専門教育の充実、米国を参考にしたブルーカラーの給与待遇の改善、若者がブルーカラーの教育を受けやすくする支援金の提供などを挙げた。政策を通して、親世代にも子どもたちがブルーカラーの仕事に就くことの意義を知ってもらいたいと強調した。

副会頭賞の小豆島中央高校チームと菅原副会頭(左)
副会頭賞の小豆島中央高校チームと菅原副会頭(左)

副会頭賞には、小豆島中央高校(香川県小豆島町)のチームが選ばれた。地元高校の卒業生を対象にしたアンケートをもとに、「食」と「IT」を融合させたスマート農業を体験できる政策を提案した。小豆島には、オリーブ・そうめん・しょうゆなど全国に誇れる伝統産業がある。島を離れた若者にも、スマート農業の枠組みを通じてこうした産業に関わり続けてもらうことが狙いだ。メンバーは「若者が帰ってきたくなるような小豆島を未来に残したい。小豆島のすべての地域を、100年先も受け継がれる私たち若者が住みたい場所にしたい」と語った。

日本の米作技術 技能実習生に技術継承

自由テーマ部門で会頭賞に選ばれた佐久長聖高校チームと、加藤会頭(左)
自由テーマ部門で会頭賞に選ばれた佐久長聖高校チームと、加藤会頭(左)

自由テーマ部門のテーマは「私が総理大臣になった時の一丁目一番地(最優先事項)」。少子化や環境問題など身近な社会課題を自分の視点で捉え、もし自分が総理大臣だったらどのような未来を築くのか、自由な発想で提案してもらうものだ。会頭賞に輝いた佐久長聖高校のチームの政策は、米を作る種籾(たねもみ)の技術を東南アジア出身者が多い外国人技能実習生に学んでもらうというものだった。

チームは、米づくりで重要な種籾農家は減少しており、技能伝承が難しくなっていると指摘した。今後外国人技能実習生の滞在期間が延長される見込みであることを踏まえ、滞在期間中に日本の種籾技術を学んでもらい、帰国後にアジアで一般的なインディカ米を使った高品質な米作りに生かしてもらう狙いだ。「日本の米の輸出拡大にもつながる」とも強調した。

副会頭賞に選ばれた高松高校チームと、菅原副会頭(左)
副会頭賞に選ばれた高松高校チームと、菅原副会頭(左)

副会頭賞を受賞したのは、若者世代の政治への関心を高めるアプリを開発した高松高校(香川県高松市)のチームだった。アプリには、政治の仕組みの学習、政策の意思決定を体験できるゲーム的なシミュレーション、興味のある政策の情報を追いやすくする「推し」という3つの機能がある。チームのメンバーたちは「アプリを実際に使ってもらって、多くの高校生たちが政治への関心の向上につながっている」とし、「特にゲームのようなシミュレーション機能が好評だった」と語った。

各地区代表チームも多彩な政策提言

受賞を逃したチームからも多様な政策提言がなされた。

北海道地区代表の当別高校(北海道当別町)のチームは、多様な社会人と高校生が交流できるコミュニティ「ネバギバ」を立ち上げることを提案した。高校生のコミュニケーション能力の向上や、社会に出る心理的なハードルを下げることを目指す。

東北地区代表の秋田高校のチームは「3Sで農業の未来を築く」と題し、日本の農業の課題を解決するためのスマート農業の推進策を提案した。ドローンなど先進的な技術の活用だけでなく、地域の空き家をリフォームしてシェアハウスとして提供し、若い世代の仲間同士が支え合える環境をつくることや、ベテラン農家がメンターとなり若者に農業を教える仕組みも提案した。「安心して働ける環境を整え、若者が農業を職業として選択しやすくしたい」という。

関東地区代表の聖心女子学院(東京都港区)のAチームは、若者向けのボランティアプラットフォームアプリを提案した。メンバーたちは「ボランティアを通して多様な価値観を学んだ学生は社会に出て、支援する側に成長してくれる。こうした好循環を実現できるようにしたい」としている。

東海地区代表の鈴鹿高校(三重県鈴鹿市)のチーム「有権者予備軍」は、卒業3年以内の若者が利用できる「やっぱやめます制度」を提案した。退職した若者が理由をハローワークに提出し、ハローワークが本人としっかり分析した上で転職先を紹介する。また、ハローワークが若者と企業の双方にヒアリングを行い、悩みなどを解決できるようにする。離職率の高い若者世代が、働きがいのある仕事を長く続けられるようにする狙いがあり、説得力のある政策案だった。

SNS見守りや廃校活用 地域課題に切り込む提案も

北陸信越地区から決勝に進出した松本県ヶ丘高校(長野県松本市)のチームは、若者がSNSなどで闇バイトや詐欺に巻き込まれないよう、国民がサイバーサポーターとして参加できる制度を提案した。SNS上の怪しい情報を通報するとポイントを得られる仕組みで、国民全体でSNSを見守る体制づくりにもなる。情報リテラシーを学習することでもポイントを得られるという。

近畿地区代表の近畿大学附属新宮高校(和歌山県新宮市)のチームは「1人1勤務先時代の転換点」を政策テーマに掲げ、受け入れ企業側のシステム導入も支援する。転職を繰り返す若者や地方の就労者などにとって大きなメリットがあるという。

中国地区代表は宇部鴻城高等学校(山口県宇部市)のチーム。「空き教室で農業革命」という斬新な発想を打ち出した。近くの高校が廃校となり、そこにあった園芸科の施設が使われなくなっていたことを「もったいない」と感じたのが、政策立案のきっかけだった。少子化で公立高校などの統廃合が進むなか、廃校施設をスマート農業の開発拠点とし、子どもを含めた地域住民が参加できるようにすることが、政策提言の柱だ。

沖縄地区代表は宮古高校(沖縄県宮古島市)のチーム「住めば宮古 政策推進検討会」だ。地方の高校生が進学や就職の情報格差に直面している状況を変えるため、地域間のオンライン交流の仕組みを提案した。チームメンバーは「高校生同士の交流は、同じ悩みを持つ同世代だからこそ話しやすいという強みがある」とし、「希望格差の改善にもつなげたい」と語った。

歯科予防から防災まで幅広い政策提言

自由テーマ部門でも、全国の学生らによる実際の政策に生かせるような政策提言が相次いだ。

北海道地区代表の白老東高校(北海道白老町)のチームは、全国の高校を「地域未来創造拠点」にする提言をした。地域コーディネーターが高校生と地域の企業などをつなげ、高校生の力を地域づくりに生かす仕組みだ。「高校生が地域の住民、企業、自治体と協働しやすくし、様々な課題解決につなげたい」という。

東北地区代表の古川高校(宮城県大崎市)のチームの提言は、健康長寿に重要な口腔ケアに着目したものだった。若者の予防を習慣化する歯科予防アプリ「歯ピネス」で、若者の歯科受診率を高めていく。AIがブラッシングを採点してポイントを付与する仕組みなどを通して、若い世代の予防習慣の定着を目指す。

関東地区代表の明治大学付属明治高校(東京都調布市)のチームは、痴漢SOS通知システムを提案した。明治大学の専門家から行動経済学や無線通信の技術についてアドバイスを受けて、実現可能なアプリを設計した。被害を受けていることを周囲の人に知ってもらえるようにしている仕組みだ。

東海地区代表の岐阜高校は、昨年の政策甲子園のインターネット投票で最優秀賞を獲得した。今年のチームは「投資を通じて日本を豊かに!」という政策を提言した。小中高生向けに学校の授業へ専門家を派遣し、実践的で正しい資産形成の知識を学べるようにする。また、投資信託を国費で少額付与する制度を導入し、自己負担なく投資への最初の一歩を踏み出せるようにするという。

近畿地区代表は、大阪つくば開成高校(大阪市)、豊中高校(大阪府豊中市)、北野高校(大阪市)の合同チームだった。アクティブシニアを介護の担い手として活用する「前向きな老々介護」を提案した。アプリを活用し、気軽に働ける仕組みをつくるという。「介護に参加することで、自分がいざというときにも見守ってもらえると感じてもらえるのではないか」としている。

中国地区代表の広島国泰寺高校(広島市)のチームは、各地で頻発するクマ被害への対策を提案した。柱となるのは、クマ追いに特化した犬とハンドラーを育成することだ。専門の資格制度を整えて犬の訓練をしやすくするほか、ICTも活用してクマが人里に近づかないようにしたい考えだ。

九州地区代表の玉名工業高校(熊本県玉名市)のチームは、学生ボランティア支援アプリで被災地の復興を後押しすることを提案した。学生ボランティアが被災者の誘導や救援物資の管理などで活躍しやすいようにする。「スマホ世代の高校生がチームのリーダーとなり、地域が一体となった強固な防災・減災体制を築けるようにしたい」という。

沖縄地区代表の昭和薬科大学附属高校(沖縄県浦添市)のチームは大都市の人口集中という課題解決を掲げた。地方の人口流出を食い止める地域ワーケーション支援や地域の交通インフラの再整備のほか、地域の観光地などの利益を地元で循環できる制度も提案している。

最優秀賞決めるインターネット投票は20日まで

昨年開催された第3回政策甲子園の国民投票では、設定テーマ部門に岐阜高校、自由テーマ部門に鳳高校(大阪府堺市)が選ばれた。両チームは昨年12月、官邸で高市首相と面会し、提案した政策を紹介した。政策甲子園の最優秀賞は、9月20日まで公式LINEアカウントを通じた投票で決定する。

前回の最優秀チームは、25年12月に官邸で、高市首相に面会し、政策を説明した
前回の最優秀チームは、25年12月に官邸で、高市首相に面会し、政策を説明した

全国高校生政策甲子園の詳しい情報はこちらから

政策甲子園公式LINEアカウントの登録はこちらから
・投票期間: 9月1日(火) 10:00~9月20日(日) 23:59 [計20日間]
・投票方法: 政策甲子園公式LINEアカウントよりご投票いただけます