
2025年3月10日、日本経済新聞社は、年商1億円を超える起業家の世界的ネットワーク「EO Tokyo Central」とのコラボレーションイベントを開催しました。セミナーではスタートアップを上場企業に導いた経営者や、連続起業家たちが熱く議論。100名超の参加者が、経営や広報・PR、人材戦略のノウハウに耳を傾けました。
【基調講演】「企業経営の極意」
- 講演者
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エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO
天沼 聰氏
自社のビジョンが成長の原動力
人々のライフスタイルを豊かにしたいという思いからエアークローゼットを起業しました。会社のビジョンは「”ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」。です。創業時からこのビジョンを掲げ、その実現のため事業に取り組んできました。
具体的な事業の方向性を定めるときに、注目したのが「時間」です。時間は、すべての人にとって平等ですが、面倒くさいと思って過ごす時間と、ワクワク過ごす時間なら、後者の方が人生における価値が高いと思うのです。そんな時間の価値を最大化するために着目したのが、女性向けのファッションレンタルサービスでした。
女性はライフステージの移り変わりで時間の価値を感じやすく、多忙だとファッションが好きでも自分に似合う洋服を探す時間が足りません。限られた時間の中でも、心が踊るような洋服との出合いを提供したい。そのような思いから、スタイリストがコーディネートを提案するファッションのサブスク事業を立ち上げました。同時に、ファッション業界で問題視される大量生産・大量廃棄問題を解決し、循環型社会の実現に貢献することにも意義を感じました。
2014年に創業した後、困難を乗り越え22年に東証グロース市場に上場して、新たなスタートラインに立てた理由は「自分がつくりたいサービスを信じて続ける」ことだけです。創業者である私が言うのは変かもしれませんが、経営者として自社のビジョンに強く共感しています。それこそが事業を成長させる原動力です。実現すべき未来をリーダーが指し示し、仲間を信頼して続けていく。その信念が、企業経営の極意であると私は考えます。

【パネルディスカッション1】「スタートアップの最新事業戦略を学ぶ」
- 登壇者
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オアシスライフスタイルグループ 代表取締役
関谷 有三氏
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レバレッジ 代表取締役
只石 昌幸氏
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LITA CEO
笹木 郁乃氏
- モデレーター
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日本経済新聞社編集
鈴木 健二朗
差別化のアイデアと広報力で事業拡大
- 鈴木手掛けている事業の概要と、自社ブランドやプロダクトを世に広めるための取り組みを教えてください。
- 只石フィットネスブランド「VALX(バルクス)」を展開し、プロテイン販売のD2C事業やフィットネスジムの運営を行っています。「VALX」事業は2019年に開始し、23年10月期の売上高は74億円にのぼりました。
マーケティングで大事にしていることは、教科書通りのやり方にこだわらないこと。たとえば、市場の大きさは、ビジネスの成長と比例すると考えています。「VALX」開始時のプロテイン市場は成熟していましたが、当社はボディビルダー・トレーナーとしてカリスマ的な人気を誇る山本義徳さんをアドバイザーとして大きく成長できました。他社との差別化を徹底し、自分たちだからできることを追求し、レッドオーシャンにひるまずチャレンジしてほしいと考えています。

- 関谷「面白いと思ったら即行動」をモットーに、世の中の常識を変えられるビジネスを行っています。近年では「スーツに見える作業着」の開発や、台湾の人気カフェ「春水堂」を国内に展開し、タピオカブームを起こしました。
モノを売るためには法則があります。まずは、テレビやラジオ、ウェブメディアに取材を受ける「オーガニック」の露出を増やすこと。そこを種火にし、データドリブンのウェブマーケティングを仕掛けていくことです。 - 笹木事業会社の広報責任者として、寝具のエアウィーヴを年商1億円から115億円へ、調理器具のバーミキュラを12カ月待ちのヒット商品へと成長させました。広報の力をもっと多くの会社に届けたいと思い、宣伝する商品や会社のことを大事にする伴走型の「広報代理店」を起業し現在に至ります。
当社の目的は、担当企業ブランドやプロダクトのファンを増やし、売り上げにつなげること。そのために必要なのがプロダクトのストーリーですが、ストーリーをメディアなどに露出させることは、一朝一夕では難しいでしょう。広報活動の効果はじわじわと出ることを理解し、長いスパンで取り組むことが成功のポイントです。

- 鈴木創業からこれまでの課題や今後のビジョンについて教えてください。
- 笹木当社では担当企業に寄り添った広報活動を行うため、人材育成に力を入れています。起業当初は何も分からずに採用活動をしてしまい、9割が退職することもありました。その後、ミッションやビジョンなどを言語化することで採用活動は順調にいっています。2030年までに従業員を300名まで増やし、広報・PRの力でスタートアップを応援したいと考えています。
- 関谷私は「令和のヒットメーカー」を自称しています。外部へのアピールだけでなく、その名に恥じぬよう努力するべく、自身を戒めるためでもあります。今後もアイデアを出し続け、日本発のデカコーン企業(株式評価額で100億ドル以上)を生み出したいと思っています。
- 只石成果を出すことを「ゲーム化」できたため、仕事を困難に感じたことはありません。ゲームに勝つためのコツは、何度でも成功するまで挑戦すること。人を羨んでマネをしようとするのではなく、自分の才能を信じて夢中で挑戦することで社会に貢献する大きな事業を成し遂げられるはずです。

【パネルディスカッション2】「スタートアップの人材戦略極意を学ぶ」
- 登壇者
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Re-grit Partners 代表取締役社長
山木 智史氏
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Hajimari 代表取締役社長
木村 直人氏
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みらいワークス 代表取締役社長
岡本 祥治氏
- モデレーター
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日本経済新聞社NIKKEI THE PITCH編集長
古山 和弘
強い組織をつくる採用と育成
- 山木当社は、総合コンサルティングファームです。2017年に創業し、現在は約420名の社員が在籍して、3000名のプロ人材と仕事をしています。採用では、求職者の応募を多く集め、自社の基準に基づきシビアに厳選しています。
- 古山求職者を集める戦略について教えてください。
- 山木大まかに2点あります。1つが、他のコンサル企業との差別化です。ビジョンをはじめ、プロジェクトの質や社内制度などについて、自社の優位性をしっかりと言語化して求職者に伝えられるようにしています。もう1つが、自社の社風に合うメディアやエージェントを広く活用すること。エージェントとの面談では、最高経営責任者(CEO)である私や経営幹部がオリエンテーションを行うことで、仲介企業をファンにする工夫も行っています。

- 古山企業が成長してくると、マネジメントやカルチャーの浸透に悩む経営者も多いと思います。
- 木村組織の人数が増えるほど、エンゲージメントを高められると私は考えています。たとえば、創業期の教育環境は職場内訓練(OJT)を行うことで精一杯でしたが、現在は新卒社員に対し、直属の上司だけでなく複数のメンターを付けて手厚く教育しています。マネジメント層に対しても、外部のプロ人材による育成を行っています。
ビジョンの共有も大事です。当社では、事業を停止し、徹底的にビジョンを共有する機会を設けています。多い時では月に4~5日に及びます。大きな機会損失にはなりますが、強い組織をつくるには、事業と同じくらい組織のために時間と労力を使うべきであると考えています。 - 古山みらいワークスは、上場の前に多くの従業員が退職したと聞いています。
- 岡本上場直前期には、当時の従業員のうち60%が退職しました。その理由は、社内カルチャーが変わったことです。上場を視野に入れるようになり、曖昧だったビジョンを明確にした上で、組織づくりを始めました。仕事のスピードがアップし、社内ルールが変わったことにより息苦しいと思う人が離職してしまったのです。
本格的に組織づくりを始めたのは上場後のことです。現在は組織構築が順調に進んでいます。成功のポイントは、面接時から自社のビジョンと提供する価値を明確に示し、共感してくれる人だけを採用することです。また、人材育成や組織開発にも十分な時間を使うようになりました。

- 古山報酬体制や組織づくりについてのお考えを教えてください。
- 山木コンサル業界の給与水準は右肩上がりです。求職者から見て納得できる報酬を用意しながら、ビジョンや業務内容など、お金以外の部分での魅力を訴求する必要があると考えています。
- 木村新卒の初任給上昇が話題になっていますが、当社でも他社に劣らない給与を意識しています。一方、中途採用については、ミドル人材の採用を控え、年収1500万円以上の高級人材採用に注力するなど、採用戦略を明確化しています。
- 岡本当社の賞与制度では、支給額をおおむね月額報酬の0~4カ月分として、個人間の差を少なくしています。チームによる成果を評価することが目的です。今後は、2年前から本格化した新卒採用を増やし、ビジョンやカルチャーを一段と組織に定着させることを目指します。

識学は2015年に創業し、人間の意識を研究する「意識構造学」をベースとした生産性向上などを目的にコンサルティング業務を行っています。これまで、4000社以上の組織運営における課題を解決してきました。当社は、創業まもなくからEO JAPANとのかかわりがあり、起業家同士が切磋琢磨しながら成長できる、情熱あふれるコミュニティであることを実感してきました。本イベントの基調講演やパネルディスカッションは示唆に富むものばかりで、スポンサーとして参加できたことに感謝の意を表します。
【協賛社コメント② SMBCベンチャーキャピタル】 投資営業第四部 髙橋 大 氏三井住友銀行のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である当社は、事業領域やステージにとらわれず、スタートアップを広く投資対象とし、年間の投資件数は約100件、投資額は合計70億円ほどの投資を実行しています。2024年4月、NIKKEI THE PITCHの特別パートナーとして協賛し、同プロジェクトのWebサイトにおいて「未来への扉」を連載。投資先との対談を通じ、当社の投資方針やキャピタリストの熱意などを感じていただけると思います。お時間のあるときにご覧いただけますと幸いです。
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