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政策甲子園でネット投票開催中 最優秀賞の栄冠は? 高校生たちが課題解決へ斬新な提案 起業家意識も醸成

政策甲子園でネット投票開催中
最優秀賞の栄冠は?
高校生たちが課題解決へ斬新な提案
起業家意識も醸成

日本青年会議所(日本JC、東京・千代田)が主催する「第3回全国高校生政策甲子園」が高校生たちの間で熱い盛り上がりを見せている。 政策甲子園は全国の高校生が日本の未来を考え、政策立案で競うコンテストであり、今年は352校がエントリーし、昨年の第2回大会から一挙に100校も増えた。 決勝大会に進出した16校のチームから最優秀賞を決める「国民投票」(インターネット投票、9月20日締め切り)が開催され、すでに昨年の投票総数を上回っている。 教育業界などで来年の参加に向けて公式サイトをチェックし、自ら投票もする動きが広がっているとされる。 政策甲子園では社会課題解決への斬新なビジネスモデルを提案するチームも多く、政策甲子園が起業家意識を育む舞台にもなっている。

決勝大会の国民投票(インターネット投票)、制作概要・プレゼン動画の視聴は下記公式サイトへ
政策甲子園サイト

政策甲子園が「夏の風物詩」に
国会議員にも政策を提言

 政策甲子園はもともと、日本JCの主権者意識向上委員会が運営を担い、若者たちの政治意識を高めるためのイベントとして2023年に第1回大会が開かれた。全国規模で高校生が政策を考えて競うようなコンテストはほとんどなく、各地の有力高校が生徒たちの教育の一環として参加を相次ぎ決めたことから、メジャーな存在になりつつある。
 主権者意識向上委員会の金本純一委員長は「全国各地の高校で、政治への参加意識を持ってもらうような出前授業も開いて今年も5000人ぐらいの高校生と接してきた。多くの高校生たちは地域課題や政治に興味があることがよく分かった。何よりも大切なのは高校生たちが自分たちの主義や主張を発表できる場を創出することであり、政策甲子園で大きな役割を果たしていきたい」と指摘した。
 今年の政策甲子園では高校生たちの意欲を高めるために新たな取り組みをしている。各地の予選大会では開催地である東京都、京都府、福岡県糸島市の自治体議員に参加してもらい、8月25日の決勝大会では現役の国会議員も審査員として加わった。「政治家の皆さんの前でプレゼンできるだけに参加する高校生たちのモチベーションも高くなった。それが地方予選や決勝大会もすごく盛り上がった理由ではないか」(金本委員長)という。

最優秀2チームは首相官邸でプレゼンの機会も

 政策甲子園では「自由テーマ」と「設定テーマ」の2部門があり、昨年の第2回大会ではそれぞれ進学校として知られる東京学芸大学附属高校(東京都)、佐久長聖高校(長野県)がインターネット投票を経て最優秀賞を獲得した。今年と同じく8月に開かれた決勝大会では日本JCの会頭賞などの特別賞があるが、両校はそこでは賞を獲得していない。実際には、その後に開催されたインターネットの「国民投票」で最優秀賞に選ばれた。今年2月にはこの2チームが首相官邸に招かれて石破茂首相に政策をプレゼンすることができた。

決勝16チームが狭き門を突破 4校が特別賞をまず獲得

 第3回政策甲子園でインターネット投票の対象となる決勝進出の16チームは激戦の地方予選を勝ち抜いてきた。自由テーマ部門「あなたは総理大臣 !! 地域の社会課題と明るい未来!」と設定テーマ部門「未来の日本を創造する !! 持続可能なデジタル政策!」との2部門で政策案を募集した。全国33都府県から352チーム(約1500人)がエントリーした。書類選考を通過した52チームが7月に東日本、西日本、九州・沖縄の地区予選に登壇。最終的に狭き門を突破した16チームが8月25日に国会議事堂参議院別館で開催された決勝大会に進出した。
 決勝大会では6人の国会議員に加え、日本JCの外口真大会頭や伊住公一朗副会頭らが審査員として採点して特別賞の会頭賞と副会頭賞が選ばれた。
 設定テーマ部門では宮城県の古川黎明高校の「古川黎明お米プロジェクト」チームが会頭賞に輝いた。田植えをしないで種もみを直接水田にまいて稲を育てる「直播栽培」の導入などで農業を活性化させる案を打ち出した。副会頭賞は沖縄県の北山高校の「てぃーだ~ヤンバルクイナが飛べる時代へ~」チームだった。政策で目指す未来を最新動画技術などでリアルに体験できたり、学校の教材として利用したりすることを重要としている。
 設定テーマ部門ではまず、第2回大会で最優秀賞を獲得した佐久長聖高校の「そらりんく」チームが会頭賞を獲得した。最新AI技術やマイナンバーを活用した相談システムで人々が抱きやすい孤立感を抑えて安心して暮らせる社会を実現したいとしている。「副会頭賞」は岡山県の山陽学園高校の「未来創造☆ひらめきソーダ」チームで、稲作のDX化で農業の効率化や消費者などとの関係強化につなげることを提案している。

インターネット投票は9月20日締め切り
最初の1週間で昨年の応募総数を突破

 ただ、第2回大会では最優秀賞は決勝大会で特別賞を獲得した学校のチームから選ばれており、今年も9月20日まで受け付けるインターネット投票の結果次第だ。登録した公式LINEでも各チームのプレゼンの動画を見ることができる。投票では2部門で最優秀賞として1チームずつが選ばれる。
 今年も9月20日締め切りでインターネット投票が始まっているが、投票数はすでに1万を超える勢いだ。昨年の投票総数である8500票を早くも上回っているのは政策甲子園の注目度が高まっているからだ。各地の有力校の関係者らが来年4月とされる第4回の政策甲子園へエントリーに向けて公式サイトで決勝進出チームのプレゼンをチェックし、投票していることが増えていることが要因の一つとされる。

各地の有力校が決勝に進出 農業DXやAI活用など斬新なアイデア多く

 決勝大会の16チームは東日本、西日本でそれぞれ6チーム(各部門で3チーム)、九州・沖縄から4チーム(同2チーム)が選ばれた。
 まず、東日本地区予選の設定テーマ部門ではまず、会頭賞を獲得した佐久長聖高校のほか、千葉県の芝浦工業大学柏高校と埼玉県の本庄東高校だった。柏高校の「ProjectY」チームは若者からシニアまで3世代ごとに政策立案をメタバース空間などで議論しながら協働できる新たな仕組みを考案した。本庄東高校の「令和のリンカーン」チームは政府による高齢者のICT教育の充実で大きな社会貢献につながるとのアイデアを打ち出した。
 設定テーマ部門の3チームはまず、1位通過したのが進学校として有名な東京都の筑波大学附属駒場高校の「シン・地方創生」チームだった。地方創生策として「ふるさと納税制度」ではなく、「ふるさと減税制度」を提案している。決勝大会で会頭賞を獲得した古川黎明高校と、設定テーマでも決勝に進出した芝浦工大柏高校もここで地方予選を突破した。柏高校の「ProjectYY」チームは地域密着の情報を発信できる若いデジタル人材を育成し地域活性化につなげていくアイデアだった。
 西日本地区での決勝進出チームの課題解決策も面白い。設定テーマ部門で1位通過したのが岐阜県の岐阜高校の「岐阜高校アグリ班」チームだった。官民連携でより使いやすい新規就農支援システムを提案している。京都市立堀川高校の「燈」チームが若者たちの将来への不安を取り除き、政治参加への意欲を高める新たなオンラインプラットフォームを作ることで、日本社会の活力を高められると考えている。もう一チームは決勝大会で副会頭賞を獲得した山陽学園高校の「未来創造☆ひらめきソーダ」チームだった。
 自由テーマ部門ではまず、京都府の嵯峨野高校の「京都の未来をカンセイ党」チームだ。深刻なオーバーツーリズム対策として地元住民専用バスの運行などを提案している。愛媛県の今治東中等教育学校の「チーム培養肉」は食糧危機の解決に役立つ「培養肉」テクノロジーを発展させるために担当相の起用を打ち出した。大阪府の鳳高校の「Re.Truther」チームは、災害時に正しい情報を得られやすくしたり、防災について多くを日頃から学べたりする公式防災アプリの導入を提案している。
 九州・沖縄地区では各部門2チームで4チームが決勝に進出した。設定テーマ部門では長崎県の精道三川台高校の「LINK」チームが1位通過した。高校生が小中高生や高齢者にスマホの使い方などを指導するデジタルリーダーとして育てることを提案している。大分県立情報科学高校の「JYOKA DOLL」チームは、空き家などを活用して地域での学びの機会を増やすアイデアを披露した。
 自由テーマ部門は副会頭賞を獲得した沖縄の北山高校と大分東明高校のチームだった。東明高校の「大分東明社会部」チームは各都道府県に高校生や大学生が地域課題を学び、解決に取り組める人材育成機関の設置を提案している。

政策甲子園で起業家育成にも寄与
新たな「夏の風物詩」として存在感大きく

 金本委員長は「今年は地域課題ということで農業分野での提案も多かった。政治家にプレゼンするということが実現したため、参加した高校生たちはより真剣に身近な課題解決を考えてくれた結果、素晴らしい発表内容になっている。どのチームが最優秀賞を獲得するかはわからず、接戦になっているはず」と指摘する。各部門の最優秀賞チームには、首相や所管大臣への政策報告会を実施する予定であり、これは参加校にとっては大きなモチベーションになっている。参加した高校の多くは自らのSNSなどを活用し、生徒たちの活躍を発信している。
 政策甲子園は若者の政治参加意識を高めることを目的に開催された。実際には高校生たちが起業家意識を高めることにもつながっているといえそうだ。高校生の起業家も増えつつあり、有力校もこうした高校生の挑戦を後押ししている。高校生が日本の社会での課題を様々な視点から考え、解決策を練り上げるために知恵を競う全国大会の意義は大きく、ここでの経験が起業家への最初の一歩となる可能性がある。来年春には第4回大会へのエントリーも予定される。全国の高校数は4800弱であり、すでに350を超えた高校のエントリー数がさらに増えていけば、高校生にとって「新たな夏の風物詩」としてメジャーな存在になる可能性がありそうだ。