2025年6月29日、日本青年会議所が主催する「JCI JAPAN TOYP 2025」の授賞式が、秋葉原UDXシアター(東京・千代田)で開催されました。「TOYP」は「The Outstanding Young Persons」の略で、「傑出した若者たち」を意味します。ビジネスや医療、環境、国際協力、地方創生など、社会を構成するあらゆる分野で挑戦する若者を発掘し、その活躍をたたえることでさらなる飛躍を後押しする——それが「JCI JAPAN TOYP」の目的です。本記事では、授賞式と交流会の模様をレポートします。
目的という信念があれば、前進し続けられる
第39回目となる「JCI JAPAN TOYP 2025」は、エントリーした407人の中から18人の受賞者を選出。今年度は、20歳未満の若者を対象とした「TOYP SEED部門」が新設されました。
授賞式の冒頭、日本青年会議所第74代会頭の外口真大会頭が登壇しました。外口会頭は、受賞者への祝意とともに、「社会課題解決に向けて果敢に挑戦する若者を、社会全体で支援する」と「JCI JAPAN TOYP」の理念を説明。さらに、本事業の受賞者は11月に開催される国際青年会議所の世界大会への参加権を得られることに触れ、日本のみならず世界的な取り組みであることを述べました。
続けて、審査員の1人であり、賞のプレゼンターを務める木村好珠氏(精神科医/産業医/メンタルアドバイザー)が登壇。木村氏は、社会をよくしようと自ら動く受賞者たちの「行動力」を高く評価し、「目標」だけでなく「目的」を持つことの重要性を説きました。「目標」とは営業成績や賞などのように結果が明確なものであり、「目的」とは「なぜ行うのか」という信念であると説明。
目標を達成できなかったとしても、目的があれば前進を実感できると語り、その上で「(受賞者の)目的が自分のためだけではなく、社会全体のことを考えている」と、その公共性の高さに賛辞を送りました。
受賞者が壇上で今後の抱負語る
授賞式では、各賞の発表と表彰が順に行われ、受賞者たちは自らの活動の背景や思い、今後の展望を語りました。TOYPの理念にふさわしく、受賞の対象となった活動は、AIを活用したビジネスから教育、アート、環境問題、防災と多岐にわたりました。
各賞の受賞者の発表に続き、「TOYP SEED部門」の表彰が行われました。
グランプリを獲得したのは、クリスタルロードの加藤路瑛氏。視覚や聴覚などの諸感覚が過敏で日常生活に困難を抱える「感覚過敏」解決のため、2020年に感覚過敏研究所を設立し、感覚過敏のある人が休めるスペースの普及や、アパレルブランドの展開などを行っています。
受賞にあたり、加藤氏は「感覚過敏のある人が安心できる、五感にやさしい社会をつくりたい」と抱負を語りました。
続けて発表された「JCI JAPAN TOYP 2025」準グランプリの受賞者は2人。1人目は、アフリカ・タンザニアで生理用ナプキンの製造・販売事業を展開し、シングルマザーの雇用創出や性教育活動を行うBorderless Tanzania Limitedの菊池モアナ氏。
壇上に立った菊池氏は「事業を行っていてやりがいを感じるのは、理不尽な状況にいる女の子が夢を思い描いて、目をキラキラさせる瞬間。志あるすべての若者が、夢を追い続けられる社会を描きたい」とビジョンを語りました。
もう一人の準グランプリは、被災地である能登半島で災害専門メディア「MuTube -被災地と未災地をよくするメディア-」を運営する、Mutubiの加藤愛梨氏。加藤氏は、被災地と、将来的に災害が発生する可能性が極めて高い「未災地」をつなぐ活動に力を入れています。被災地で培われた知見を防災に役立て、「被災地で生まれる知財を未災地で活用し、知識と経済の循環を生み出す」と被災地復興と防災を両立する道筋を示しました。
そして「JCI JAPAN TOYP 2025」のグランプリは、学校になじめない子どもたちに教育を届けるオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」を運営する、NIJINの星野達郎氏。
星野氏は、SOCIALBUSINESSのビジネスコンテスト「NIKKEI THE PITCH SOCIAL 2024-25」においても、グランプリを受賞しています。
(星野氏のインタビュー記事はこちら▶不登校生に寄り添う教育こそ、多様な人材を育てる 日本の教師力も高めて「新しい学校」を創る | NIKKEI THE PITCH)
同校では、メタバースとリアルキャンパスを融合させ、既存の「学校」の枠組みにとらわれず、個々の才能や特性に応じた教育モデルの構築を目指しています。星野氏は、次のように宣言しました。
「NIJINアカデミーには、多様な生徒が在籍しています。例えば、チック症状により言葉がうまく出ず不登校になっていた小学4年生が、本校でプログラミングと出会い、環境問題を解決するため勉学に励む姿に感銘を覚えたこともありました。私たちは、本校の教育モデルを世界に広げ、元気で明るい未来をつくっていきます」
交流で新たな共創の可能性を探る
授賞式後には、交流会が開催されました。そのオープントークセッションとして、AJO(全日本応援協会)代表理事の朝妻久実氏が登壇。
AJOは、「Share Happiness ~応援を力に、世界を元気に~」をコンセプトに「AJO☆朝チア部」を結成し、東京・神奈川・静岡などの駅前で、朝に街を歩く人々をチアリーディングで応援する活動を展開しています。
トークの中で、朝妻氏は就職活動やフリーアナウンサーとしての挫折経験から「応援」へと行き着いたと語り、「諦めない」ことの大切さを強調。
その後、ステージに立ったAJO☆朝チア部のパフォーマンスを通じて、受賞者たちは互いのビジョンの実現に向けてエールを送り合いました。
交流会では、運営に携わった日本青年会議所のメンバーも含め、参加者同士が積極的に交流する姿が見られました。
グランプリを受賞したNIJIN・星野氏は、取材に対し「『JCI JAPAN TOYP 2025』のようなイベントに登壇することは、経営者として努力する姿を、起業を志す生徒に見せられる絶好の機会です。プレゼンテーションのための準備過程は、自分自身の考えが整理され、事業が成長する糧となります。また交流の機会を通じて、教育を変えるための共創のきっかけを得ることができるでしょう」と本事業の意義について語ってくれました。
受賞者一覧
(詳細はこちらから▷https://www.jaycee.or.jp/toyp/entry/)
| 表彰 | 氏名 | 所属企業・団体名 | 活動内容 |
|---|---|---|---|
| グランプリ・内閣総理大臣奨励賞 | 星野達郎 氏 | 株式会社NIJIN | 不登校の小中学生向けオルタナティブスクールを運営。メタバースとリアルの融合による新しい教育モデルを全国・海外で展開 |
| 準グランプリ・外務大臣賞 | 菊池モアナ 氏 | Borderless Tanzania Limited | タンザニアで使い捨て生理用ナプキンの製造・販売事業を展開。若年妊娠で退学したシングルマザーの雇用創出や生理の貧困解決に取り組む |
| 準グランプリ・総務大臣奨励賞 | 加藤愛梨 氏 | 株式会社Mutubi | 災害専門メディア「MuTube」を運営し、被災地からの情報発信や防災啓発活動を実施 |
| SEED部門 グランプリ | 加藤路瑛 氏 | 株式会社クリスタルロード | 感覚過敏の課題解決のため、研究・商品開発・情報発信・当事者コミュニティ運営など多角的に展開 |
| SEED部門 準グランプリ | 宮田あかり 氏 | 石川県立金沢錦丘高等学校 | 高校生と企業をつなぐ衣服のレンタル&モニターサービスのビジネスプランを考案 |
| SEED部門 準グランプリ | 林千乃 氏 | 学校法人三重高等学校 | 日本人と外国人が共に地元を愛し、挑戦できる社会を目指す活動 |
| 衆議院議長奨励賞 | 浅井しなの 氏 | 株式会社 asai | 生理の経血成分を解析し、婦人科系疾患の早期発見を可能にするキットを開発 |
| 参議院議長奨励賞 | 山本乃々佳 氏 | 難病を抱えながら、高校生の時から社会活動家として環境・政治問題に取り組む | |
| 経済産業大臣賞 | Guan Dian 氏 | Patsnap | AIを活用し、知的財産や研究開発の専門家向けにインサイトを提供するAI駆動型製品群を展開 |
| 農林水産大臣賞 | 渡邊博文 氏 | 株式会社オオサカポテト | 耕作放棄地を活用し、ブランドさつまいも「夢シルク」を開発。新しい都市農業モデルを構築 |
| 環境大臣奨励賞 | 上坂嵩 氏 | 名古屋テレビ放送株式会社 | 「SDGs出前教室」を実施し、環境や社会課題を考える機会を創出 |
| 厚生労働大臣賞 | 松本拓朗 氏 | 東北大学眼科 | AI技術を活用した眼科診療の自動化デバイスを開発し、訪問オンライン眼科を設立 |
| 文部科学大臣賞 | 奥村春香 氏 | 特定非営利活動法人第3の家族 | 家庭環境に問題を抱える少年少女のための匿名で利用できるWebプラットフォームを開発・運営 |
| NHK会長奨励賞 | 水上拓哉 氏 | 地域の人々と交流しながら、その歴史や文化を作品に反映させる絵画制作・展示発表 | |
| 全国知事会会長奨励賞 | 中嶋弓子 氏 | 東京おでかけプロジェクト | 病気や障がいのある子どもと家族が「行きたい場所へ」行けるよう支援する活動を展開 |
| 日本青年会議所会頭特別賞 | 田澤麻里香 氏 | 株式会社KURABITO STAY | 長野県で酒蔵と連携し、地域資源を生かしたツーリズムを企画・実施 |
| 日本青年会議所会頭特別賞 | 萩原望 氏 | 一般社団法人FCNono | インドの農村部で、スポーツを通じた社会開発とジェンダー平等の推進活動を展開 |
| 日本商工会議所奨励賞 | 小川卓 氏 | 3tive.design合同会社/アトHEN実行委員会 | 「アートなHENTAI万博」を主催し、クリエイターたちが連携して新たな価値を創造するプラットフォームを構築 |
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