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起業家と有力投資家 新たな共創の舞台に Open Innovation Festival WESTリポート

同イベント交流会では100人を超える起業家や有力投資家が交流し、新たな共創の場が広がった。ストライクの荒井社長(前列左から3人目)は若手起業家らと意見交換をした

起業家と有力投資家 新たな共創の舞台に
Open Innovation Festival WESTリポート

日本経済新聞社が未来を担うスタートアップやアトツギベンチャーを支援する「NIKKEI THE PITCH」プロジェクトは2年目を迎え、日本最大級のピッチコンテストという枠組みを越え、有力ベンチャーキャピタル(VC)や地方の有力企業との連携を促す「共創の場」として新たなプログラムを次々に展開している。その象徴ともいえるのが、11月26日に岡山市内のコンベンションセンターで開かれた「オープンイノベーションフェスティバル WEST」だ。

NIKKEI THE PITCHは昨年、全国を8地区に分けて、それぞれの地域でブロック予選を開催してきた。今年はオープンイノベーションフェスティバルWEST / EASTとして、西日本と東日本の2ブロックに分けての開催とし、ピッチ予選に登壇する起業家と、VCなどとの関係構築ができるよう、起業家ピッチ以外のプログラム「リバースピッチ」と「交流会」も新たに実施した。
本記事では、このリバースピッチと交流会の様子を紹介する。

熱意溢れるプレゼン
 地区予選は例年以上に激戦

SMBCVCの佐伯社長は地区予選に登壇した起業家による熱意あるピッチに心を動かされたという
SMBCVCの佐伯社長は地区予選に登壇した起業家による熱意あるピッチに心を動かされたという

岡山市のオープンイノベーションフェスティバルWESTではまず、近畿、中国・四国、九州・沖縄という3地区の予選大会で書類審査を通過した35社にプレゼンの機会が与えられ、審査員たちの間では「かなりの激戦ではないか」との声が出ていた。過去のNIKKEI THE PITCHで受賞した起業家らを交えてのアクセラレーションプログラムに加え、地方の有力企業側から課題などを説明してスタートアップとの関係強化を目指す「リバースピッチ」も開かれた。地区予選に挑戦した多くの起業家が交流会の会場に残り、有力VCやスタートアップ支援機関の幹部らと懇親し、新たなネットワーキングの輪が広がった。

NIKKEI THE PITCHの運営にも深く関わり、スタートアップ支援を強く後押しするSMBCベンチャーキャピタルの佐伯友史社長は「地区予選のピッチでは登壇した起業家の皆さんが4分間という短い時間を使って、熱意溢れるプレゼンをしてくれた。本当に自分たちの技術やアイデアを伝えたいという思いをひしひしと感じることができて素晴らしかった。」と語った。

リバースピッチこそ
地方創生の切り札

ストライクの荒井社長は、日本の課題である地方創生において、地方の有力企業と起業家を結び付けるリバースピッチが重要だと強調した
ストライクの荒井社長は、日本の課題である地方創生において、地方の有力企業と起業家を結び付けるリバースピッチが重要だと強調した

岡山で開かれたオープンイノベーションフェスティバルWESTの交流会テーマは「未来を語り、未来が動き出す。出会いとアイデアが交差するネットワーキング」だった。その通りに、交流会では有力な地方企業が登場するリバースピッチがまず開かれたが、予選会でプレゼンをしたばかりの起業家のほとんどが熱心に説明に耳を傾けていた。

今年初めてリバースピッチが開かれることになったのは、同じくNIKKEI THE PITCHでの起業家支援に関わるM&A仲介大手、ストライクの荒井邦彦社長の発案があったからだ。荒井社長は「私たちの会社は日本の地方創生に貢献することを大きなミッションにしてきた。地方にある優れた会社でも後継者不在という課題を抱えており、M&Aや事業承継でお手伝いをしてきた。ただ、もっとできることがあるのではないかと考え抜いた末に思いついたのがリバースピッチだった」と語る。

NIKKEI THE PITCHではストライクやSMBCのほか、地方金融機関や有力企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)など数多くのパートナー企業がある。荒井社長のリバースピッチという提案はNIKKEI THE PITCHに参加する起業家たちにとっても大きな成長の機会になるとの声が多く、西日本鉄道など有力企業8社が登壇することになった。

九州の都市ガス会社も、
出資の大半は東京で

「私たちは九州の都市ガス会社と思われているが、エネルギーと暮らしの総合サービス事業グループとして様々なビジネスに取り組んでいる。グループのCVCでも関東を中心に九州以外の数多くの会社に出資している。社会に貢献できるサービスを拡大していくためにも起業家の皆さんと連携していきたい」。九州の都市ガス大手である西部ガスのCVCであるSGインキュベート(福岡市)の三角臣啓投資部長はこう強調する。

西部ガスはグループで取り組む総合的な生活産業として起業家との連携を加速している
西部ガスはグループで取り組む総合的な生活産業として起業家との連携を加速している

実際にSGインキュベートはこれまで51社に投資し、投資先のほぼ7割は東京の企業だ。シードから様々な段階で投資している。西部ガスは一般家庭や法人などガスで100万という顧客アカウントを抱えているという強みを生かし、不動産、食品、レジャーや介護施設など幅広く事業を運営している。「人々の暮らしをより良くするサービスを拡大したい」との思いから、最近でもフードロス削減を目的としたECサイト運営のクラダシ(東京・品川)などに出資し業務提携している。同グループが抱える課題やニーズなどをサイト「TOMOSHIBI」で公開し、起業家などからのアイデアを受け付けている取り組みも注目されている。

鉄道・バスの西鉄、
食品分野など新たな成長を模索

西日本鉄道も鉄道やバスなど主力の運輸事業で成長しており、スタートアップへの出資との提携に意欲を示した
西日本鉄道も鉄道やバスなど主力の運輸事業で成長しており、スタートアップへの出資との提携に意欲を示した

同じく九州の大手である西日本鉄道が強調したのも、他の地域にある起業家たちとの連携強化を進めているということだった。新領域事業開発部の塩田昂明氏は「西鉄は国内でもバス所有台数が日本一というように運輸会社としてのイメージが強いが、運輸の比率は2割程度であり、不動産や流通など幅広く事業を展開している。今後の成長に向けてシナジーを生み出せるようにスタートアップとの関係を強化したい」と語った。

西鉄は鉄道やバスなど運輸事業会社として有名だが、不動産・ホテルや航空輸送をメインとする物流、流通やサービスを含めて幅広く事業を展開している。西部ガスと同じく総合的な生活企業を模索しており、最近では九州の強みである食品関連事業を成長戦略の柱の一つとしている。今年10月には食品関連の総合商社であるヒノマルホールディングス(熊本市)を買収するなど積極策に出ている。

同社でもオープンイノベーションプログラム「Join up with Nishitetsu」があり、インバウンド客の取り込みや人材不足への対応などグループの課題への提案を受け付けている。

西部ガスと西鉄は九州基盤の大企業として知られるが、ピッチに参加した複数の起業家からは「九州以外のスタートアップとの連携に積極的であることが分かった。ぜひ提案をしたい。」との声が出ていた。

京都の中小企業連合
 大学発ものづくりベンチャーを支援

京都では中小企業連合の京都試作ネットがものづくりベンチャーを支援している
京都では中小企業連合の京都試作ネットがものづくりベンチャーを支援している

リバースピッチには、中小企業の連合体である京都試作ネット(京都市)の佐々木智一代表理事も登壇した。佐々木氏は、「現在、40社の中小企業が参加しており、試作や設計などそれぞれに強みを持つ。ハードウェア、つまりものづくりのスタートアップの支援でも多くの実績がある」と指摘した。

例えば、京都試作ネットでは長岡技術科学大学発のスタートアップのパンタレイ(新潟県長岡市)を支援した。パンタレイは小型風力発電機を開発しており、試作品の設計で図面作成段階から協力している。京都のモノづくりの強みを生かし、日本のスタートアップの駆け込み寺として役割を担いたい考えだ。

リバースピッチでは福岡市の運送会社であるアラトの赤塚亮太代表取締役も登壇した。同社は、山口フィナンシャルグループから中小企業と経営人材をつなぐ「日本版サーチファンド」として出資を受けたことで知られ、三井物産出身の赤塚氏が事業承継する形で経営トップに就任した。赤塚氏は新規事業としてトラックの荷台を広告塔とする「アドトラック」事業に注力しており、起業家との連携にも意欲を示した。

また、岡山市の総合建設コンサル会社であるウエスコの本間誠之CVC推進リーダーは「国内でも深刻な課題である老朽化するインフラの改修などについてスタートアップの技術を活用していきたい。」と語った。同社は自治体など行政向けの建設コンサル事業が主力だが、瀬戸内海を望む四国水族館(香川県宇多津町)を運営するなど多角化も進めている。

日本テレネット(京都市)は京都府が注力する新産業創造リーディングエリア「アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都(ATVK)」(京都府大山崎町)に拠点を構え、高齢者のウェルビーイングを向上させる様々なサービスの開発に取り組んでいる。

多くの起業家がVC幹部らと意見交換
 交流会が盛況に

リバースピッチ後には会場で交流会が開かれた。SMBCVCの佐伯社長やストライクの荒井社長らがピッチに登壇した起業家らと懇親した。

夕方からの交流会が盛況だった。SMBCVCの佐伯社長や(中央左)やレオス・キャピタルワークスの関悠樹氏らが起業家と懇談した。決勝大会でアトツギベンチャー部門賞を獲得したマクライフの牛垣氏(左から2人目)も参加した
夕方からの交流会が盛況だった。SMBCVCの佐伯社長や(中央左)やレオス・キャピタルワークスの関悠樹氏らが起業家と懇談した。決勝大会でアトツギベンチャー部門賞を獲得したマクライフの牛垣氏(左から2人目)も参加した

佐伯社長はピッチに登壇した起業家たちから多くの質問を受けてアドバイスをしていた。昨年のNIKKEI THE PITCH決勝大会でアトツギベンチャー賞を獲得したマクライフ(岡山県津山市)の2代目である牛垣希彩氏も交流会に参加していた。マクライフは東日本大震災で天井が崩落したことで多数の死傷者が出たために、安全な膜の天井を事業として展開しており、自治体の体育館など多くの実績がある。昨年の決勝大会では佐伯社長も審査員を務めており、「マクライフのビジネスのことも覚えてくれていて激励していただいた」(牛垣氏)という。

ストライクの荒井社長(中央)も前回大会で中国・四国ブロックでオーディエンス賞を獲得したACTA PLUSの吉本氏らと今後の事業展開などについて語り合った
ストライクの荒井社長(中央)も前回大会で中国・四国ブロックでオーディエンス賞を獲得したACTA PLUSの吉本氏らと今後の事業展開などについて語り合った

ストライクの荒井社長も前回の地区予選でオーディエンス賞を獲得し今年もピッチに登壇したACTA PLUSの吉本龍太郎(右)ら多くの起業家に囲まれていた。荒井社長は盛況な交流会の会場を見渡して「これほどたくさんの起業家が残ってくれて、活発な意見交換ができたことは良かった。」とし、「私たちは地方で本当に多くの会社と仕事をさせていただいており、スタートアップの起業家の皆さんと一緒にやれることがもっと多いと考えている。これからもリバースピッチを含めて各地でネットワークをしっかり作っていきたい。」と強調した。