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CVC×スタートアップ 協業を加速させる対話の夜 SBI×NIKKEI THE PITCH IVS前夜祭

7月1日~3日、国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS(アイブイエス)」が京都市で開催された。京都での開催が4回目となった今年は、経営者や機関投資家などの意思決定層を招待した完全招待制エリア「IVS CORE」が新設されるなど、過去最大規模での実施となり、多くの来場者でにぎわった。

開幕前日の6月30日には、NIKKEI THE PITCHとSBIによるサイドイベント「IVS前夜祭|IVS攻略トーク×CVCリバースピッチ by SBI × NIKKEI THE PITCH」が京都市内で開催された。イベントでは、IVSの歩き方をテーマにしたパネルトークをはじめ、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)など13社によるリバースピッチが行われた。会場には事業会社やCVC担当者、スタートアップ関係者ら200人以上が集結。ネットワーキングでは登壇者や参加者らによる熱心な情報交換が行われ、盛況のうちに幕を閉じた。

「誰と行くか」で変わるIVSの価値

第1部にはIVS経験者のVC・CVCの3人が登壇。IVSの攻略法をテーマに議論を交わした。パナソニックで新規事業・CVCを統括する郷原邦男氏は、参加の目的を「自社CVCのプレゼンスの向上」にあるとした上で、「4年前から一貫してこの目的を掲げ、スタートアップやVCにパナソニックのCVCを知ってもらうための活動を続けている」と語った。

「目的は誰と行くかによって変わる」と述べたのは、CVCコミュニティ「CVC vs CVC」を運営する石井達也氏だ。普段スタートアップ関連のイベントに参加しない事業部や役員レイヤーの人々を連れてくる場合は、社内への配慮も欠かせない。スタートアップエコシステムの熱量を社内に持ち帰り、周囲を巻き込むこと。それこそが、自社のCVC活動をブーストさせる原動力になるからだ。

石井氏は、「あらかじめ、目的に応じた3日間のイベントの回り方の戦略を立てておく必要がある。私が上層部を連れてくる際は、他のCVCと連携して同レイヤーの役職者同士を引き合わせる場をあらかじめセッティングするようにしている」と具体的な攻略法を明かした。

左から、パナソニック CTRO(Chief Transformation Officer)兼 CVC推進室 室長 郷原邦男氏、CVC vs CVC Organizer 石井達也氏
左から、パナソニック CTRO(Chief Transformation Officer)兼 CVC推進室 室長 郷原邦男氏、CVC vs CVC Organizer 石井達也氏

本質的な関係を築くネットワーキング術

IVSの最大の魅力は、多様なネットワーキングの機会にある。石井氏は、「できる限り本質的な関係を築ける人とネットワーキングをすることを意識している。そのためには、IVSに参加している目的や、自身が相手に何を提供できるかという会話の前提を相手と揃える必要がある」と語った。自身の担当外の相談に対しては適切な社内人材を紹介したり、話が合わない場合は次の予定を示唆して会話を切り上げるなど、互いの時間を尊重することも必要だとした。

郷原氏は会場で声をかけてもらうための工夫として「名札に社名や肩書を略さず書くと、フォントが小さくなり遠目から読みにくくなってしまうことに気づいた。それ以来、なるべく文字数を減らし視認性を高めるようにしている」と実践的なノウハウを共有した。

多くの人と出会える大規模イベントだからこそ、相手の記憶に残るための事後アプローチも忘れてはならない。仲良くなりたいと思った相手に対してはできるだけその日中に連絡を入れるスピード感が、相手からの信頼や好感を勝ち取ることにもなる。

セカンダリーの受け皿にも CVCに広がる新たな役割

議論は、CVCの役割の変化にも及んだ。業界に8年携わってきた石井氏は、自身の経験をもとにCVCの役割の多様化を指摘した。「かつてはリミテッドパートナー(LP)出資など、スタートアップエコシステムを支える『お財布』と捉えられる側面もあった。現在は、事業会社としての強みを生かした協業推進や成長支援の役割が求められている。また、最近の新規株式公開(IPO)市況の低迷を背景に、M&A(合併・買収)やVCからのセカンダリー(2次流通)を含めた、エグジットの新たな担い手としても期待が高まってきている」とし、CVC自身が主体的に資本政策を検討していくことが重要と話した。

セカンダリーをCVCが引き受けることについては、VCの立場からも好意的なコメントが寄せられた。SMBCベンチャーキャピタルは、470社強の投資先を抱え、年間約100件の投資を執行する。同社の松下克俊執行役員は、「CVCがしっかりと事業として引き継いでくれることは非常に心強い」と歓迎した。

SMBCベンチャーキャピタル 執行役員 松下克俊氏(右)
SMBCベンチャーキャピタル 執行役員 松下克俊氏(右)

出資が事業部の協力を引き出す

CVCは投資と自社事業との連携をどう両立させるべきなのだろうか。多くの事業部を持つパナソニックの郷原氏は、「事業部単体では実現できないことにスタートアップと取り組んでいきましょうというのが我々のスタンスだ。中期経営計画を読み込み、各事業部が目指す方向性やニーズを深く理解することから始めている。それに基づき、適切な投資領域やスタートアップを見つけ出すようにしている」と述べた。

その上で、少額であっても資本を入れていくことが協業を加速させると強調した。大企業はスタートアップと比べてスピード感が遅いため、出資のフックがあるからこそ双方が同じ方向を向くことができるという。

大企業側から見れば、初期の出資を通してスタートアップと長期的な関係を築くことは、それ以降出資比率を高めたり、子会社化や完全買収をする時の成功確率を上げることにもなる。「全てのケースがそうではない。スタートアップのソリューションと連携するだけで十分に成果が出るケースもあれば、機能を社内に完全に取り込んで一体となって進めた方が、成長スピードを加速できるケースもある。そうした将来的な選択肢を事前に見極め、考慮しながらお付き合いをするようにしている」(郷原氏)

これを受け、石井氏は「出資はいわば『プレPMI(買収後の統合プロセスの前段階)』のようなもの。M&Aは全社的な経営判断を伴うため、事業部側の合意がないと進まない。一見意味がないように思える少額出資であっても、事業部の協力を引き出しておくことは有効だろう」と話した。

偶発的な出会いにこそヒントあり――全力の3日間を

セッションの締めくくりには、翌日から始まるIVSの心構えとして、サイドイベントのラインアップの再確認や、3日間動き回るための体力づくりなどのリアルなアドバイスが飛び交った。参加の目的を明確にしつつも、予定を詰め込みすぎないことも重要だと登壇者は口を揃えた。自社とは一見関連がなさそうなサイドイベントに足を運んでみるだけで、新たな共創のヒントが見つかるかもしれない――。会場は、明日から始まる本番への期待感に包まれた。

リバースピッチ CVC13社がファンド戦略を披露

二人組合方式で事業会社のCVC運営を支援するSBIインベストメントは、これまでに24社の事業会社と総額1825億円のファンドを組成してきた実績を持つ。イベントの第2部では、同社が伴走するCVCなど13社が登壇し、ファンド概要や注力領域をプレゼンするリバースピッチが行われた。登壇企業は以下の通り。

東急不動産ホールディングス、三井金属、ハウス食品グループ本社、KDDI、パラマウントベッド、リコー、パナソニック、インテージホールディングス、住友生命保険、NIPPON EXPRESSホールディングス、山九、ふくおかフィナンシャルグループ、NTTドコモ・ベンチャーズ(登壇順)

リバースピッチの様子
リバースピッチの様子

NIKKEI THE PITCH M&A特化型カンファレンス「XDEAL」に
イベントパートナーとして参画

東証の上場維持基準の引き上げや低調なIPO市況を受け、スタートアップの成長手段としてM&Aが注目され始めている。7月3日、経営者・企業の「買い手」となりうるバイヤー・アドバイザリーら500人が一堂に会するM&A特化型カンファレンス「XDEAL」がIVS公式サイドイベントとして京都市内で開かれ、NIKKEI THE PITCHはイベントパートナーとして参画した。

会場では経営者らがM&Aの実践知を共有するセッションに加え、買い手が買収ニーズや求める会社像を提示する「バイヤーズピッチ」が行われた。今年5月、経済産業省は諸外国に比べて成長手段としてのM&A活用が遅れている現状を踏まえ「スタートアップM&Aガイダンス」を公表。官民双方からM&A促進の機運が高まる中での開催となり、経営者や実務家が具体的なM&Aの可能性を議論した。