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日本青年会議所「第9回価値デザインコンテスト」リポート HelloWorld(ハローワールド)「NIKKEI THE PITCH賞」など3冠達成

日本青年会議所
「第9回価値デザインコンテスト」
リポート
HelloWorld(ハローワールド)
「NIKKEI THE PITCH賞」など3冠達成

日本青年会議所(JC)は7月19日、横浜市内で「第9回価値デザインコンテスト」を開催した。 9回目となる今年は381件のエントリーがあり、2年前と比べて3倍以上に増えた。 JCにとって重要なイベントであり、今年は日本経済新聞社が協賛し、スタートアップを支援するプロジェクトである「NIKKEI THE PITCH(NTP)賞」も加わった。 今回のコンテストでは子供たちが学校の授業などで国際交流ができるサービスを展開するハローワールド(沖縄県沖縄市)が大賞、デジタル大臣賞とNTP賞の3冠を達成した。 内閣総理大臣賞など他部門でもJCが掲げる地域課題を解決する斬新なビジネスモデルで地域課題解決に取り組むスタートアップが受賞した。

地域課題解決のスタートアップ 日本経済の成長をけん引

 今年の価値デザインコンテストは「地域」を重要なキーワードとした。 コンテストでは多数の応募の中で書類審査などにより、決勝のファイナリストとして5人が登壇した。 価値デザインコンテスト委員会の東田春彦委員長は「これからの日本の経済を盛り上げていくのは、 一部の大企業や行政の旗振りによるものではなく、それぞれの地域で理想の未来を描き、社会課題に取り組む一つ一つの企業だ」とし、 「ファイナリスト全員から、自分たちがこの地域を、そして日本をより良くしていくという強い想いを感じた」と語った。

公立中高生ら34万人以上が国際交流を体験

ハローワールドの共同CEO、冨田氏
ハローワールドの共同CEOである冨田氏は多くの子供たちに国際交流の機会を提供している。

 ハローワールドは多様性ある社会を実現するために、中学生らに国際交流の機会を提供する様々なサービスを展開してきた。具体的には主に中学生が日本在住の外国人の家に1日ホームステイする「まちなか留学」や、英語のスピーキング力を高めたり、海外の学校と結んで英語で交流できたりするサービス「ワールドクラスルーム」などだ。同社は2020年に創業されたばかり。それでも25年度には累計34万5000人が同社のサービスを利用して国際交流する実績が高く評価された。海外ではすでに中学校を中心に58カ国で提携校がある。
 今回のピッチに登壇したのは創業者であり、共同の最高経営責任者(CEO)である冨田啓輔氏だ。もともと、人事労務では国内でも最強とされる東京の弁護士事務所で活躍していた。2018年に米カリフォルニア大学バークレー校の上席客員研究員となり、起業家として目覚めた。「多様性のある社会こそがイノベーションを生み出せる」ことを痛感し、国内でも異文化を理解できるビジネスとしてハローワールドを創業した。
 ハローワールドの取り組みで高く評価されたのは、公立の学校の生徒が海外の同世代の子供たちと交流できるようにしたことだ。AI(人工知能)を活用した英語のスピ―キング練習なども評価が高く、料金も割安に設定しており、公立学校での導入が進んでいる。
 冨田氏は表彰式で「裕福な人など一部の家の子供たちではなく、地方を含めてすべての子供たちが国際的に交流し、多様性や異文化を学んでもらい、世界の国々のどこでも一人は友達がいるような社会にしたい」と語った。

内閣総理大臣賞のデジラボ 歩行動作をAIで分析して健康長寿に貢献

デジラボホールディングス、斎藤代表取締役
健康長寿のアプリを展開するデジラボホールディングスの斎藤代表取締役

 内閣総理大臣賞を獲得したのは、福島県楢葉町で23年に創業されたデジラボホールディングスだ。同社は政府の地方創生策である「地域おこし協力隊」などの制度を活用し、デジタル活用などで地域の事業者の社会課題解決を後押ししている。この会社では「年間100人以上受け入れる学生インターンとともに事業企画をしており、共同経営をしている」(斉藤隆秀代表取締役)という。
 同社の事業で注目されているのは東北大学の大学発ベンチャーと共同で開発した健康寿命を延ばすためのサービスだ。アプリをインストールして歩行動画を撮影するだけで AIの分析により体の状況を細かく把握し、家族らともデータを共有でき、健康を維持できるように効果的な運動などの予防も対応しやすくなる。福島県楢葉町などで導入され、介護施設などでも利用されている。
 同社の斎藤氏は「介護に関わるコストというものは 右肩上がりで増えている。私たちの取り組みで下がった分を成果報酬としていただけるような契約体系を作っていきたい」と語った。

経済大臣賞にRoot MR体験で農業の楽しさ伝える

Root、岸代表取締役
神奈川県南足柄市で農業をしながら、先端アプリを開発するRootの岸代表取締役

 農業分野でAR(拡張現実)など先端テクノロジーを活用した様々なアプリを開発しているRoot(神奈川県南足柄市)が経済産業大臣賞を獲得した。同社の岸圭介代表は「農業の価値が人々にとって身近にある社会を目指している」と語った。同社は農作業を効率化するためのアプリに強みがあるが、高齢者らを含めて多くの人たちが農業の楽しさを知ってもらうようなサービスを提供している。
 岸氏は東京大学法学部に入学してから1年後に休学し、北海道大樹町の牧場で1年間、住み込みで働いて、「農業って本当に楽しいと感じた」という。復学して卒業後、鉄鋼大手に入社するも退社し、茨城県で農業に従事した。英オックスフォード大学でMBA(経営学修士号)を取得後の2017年にRootを創業した。
 今回のプレゼンでは様々なサービスを紹介したが、その一つが熊本県でのトマトの収穫体験だ。介護施設の老人がスマートグラスをつけて、農園でトマトを収穫するリアルな体験をできるようにして、最後にはそのトマトが発送されてくるというものだった。
 岸氏は「(高齢者の方は)実際に指を動かすので、運動機能の回復にも役立つ」とし、「仮想と現実が融合した新しい農業体験では教育を含めて大きな可能性がある」と指摘する。岸氏は本社のある神奈川県南足柄市の農場で、自ら農業をしながら、新たなアプリを開発する日々だ。それが同社の強みになっている。

文部科学大臣賞は中学生起業家 子供のAI教育機会を拡大

EdFusion、近藤にこるさん
中学生3年生ながら、子供たちのAI教育プログラム普及を進めているEdFusionの近藤にこるさん

 価値デザインコンテストで会場が最も盛り上がったのは、中学3年生の起業家であるEdFusionの近藤にこるさんのプレゼンであり、文部科学大臣賞を獲得した。
 近藤さんが提供するのがAI教育プログラム「Butterfly Base」だ。子供たちがワークショップやセミナーなどでAIについて学び、自分たちで考え課題解決などに使い、最終的にそれを発信していく場を設定している。近藤さんは「子供たちが挑戦できるような世界を作っていきたい」と語った。実際に大阪・関西万博などでも企業と連携してイベントなどを実施していく計画だ。
 もともと、近藤さんは中学校1年生の時に学校での総合学習の授業で、起業について学び、それに興味を持った。具体的なテーマとしてAIに着目したのは、人間のコミュニケーションをより広げる重要なテクノロジーだと痛感したからだ。中学生起業家として若さだけでなく、その取り組みも斬新といえ、企業の協賛を受けられている。

環境大臣賞にコクリエ 橋梁など老朽インフラを地域で守る

コクリエ、髙﨑陽子代表取締役
コクリエの髙﨑代表取締役は「地域のインフラは地域で守る必要がある」と語った。

 環境大臣賞を獲得したのは、大阪大学発ベンチャーであるコクリエ(大阪府豊中市)の髙﨑陽子代表取締役だった。同社は橋梁など老朽化したインフラの改修問題に取り組んでいる。最近は埼玉県での下水道の陥没事故など老朽インフラが大きな課題になっており、自治体にとっては限られた予算や人員などリソースが限られ、対応が難しくなっていた。
 髙﨑氏は「地域のインフラは地域で守る必要がある。地域の土木関係の事業者にインフラ整備のノウハウを提供している」と語った。特に国内では橋梁が50万以上もある。ほとんどは長さが15メートル以下の小規模橋梁だ。こうしたインフラの整備のノウハウに加え、亀裂などを察知するセンシングデバイスの実用化にも動いている。特に強調しているのはインフラ整備では地元の事業者こそが良く状況を理解しており、その力を活用することでコスト削減にもつながるということだ。
 髙﨑氏は環境大臣賞の受賞について「地域のインフラを守ることは地味なようにみえるが、ものすごく格好いい仕事であることを伝えていきたい」と喜びを語った。

NTP 青年会議所のアトツギベンチャーに期待

 日本経済新聞社は日本青年会議所ともに、今後の日本経済をけん引するスタートアップやアトツギベンチャーの支援で連携していく。 日本青年会議所には優れたアトツギベンチャーも多く加盟しており、11月以降に開催されるNTPの予選大会でも注目されそうだ。