
7月19日、日本経済新聞社東京本社内のイベント会場にて、注目スタートアップの代表によるセミナー&交流会が開催されました。2つのトークセッションでは、学生時代に起業したZ世代の起業家や、昨年のスタ★アトピッチJapan決勝大会に参加した有望スタートアップの代表が登壇。事業化の秘訣や飛躍のポイントなどについて、たっぷりと語っていただきました。後半の交流会では若手起業家や起業を目指す学生など、多くの参加者と登壇者との活発なコミュニケーションが生まれました。
トークセッション第1部学生起業のススメ
- 登壇者
- 株式会社Kakedas 代表取締役CEO
渋川 駿伍氏
- 株式会社e-lamp. 代表取締役
山本 愛優美氏
- 一般社団法人 Child Play Lab. 代表理事
第4回日経ソーシャルビジネスコンテストファイナリスト猪村 真由氏
- モデレーター
- 株式会社横田アソシエイツ 代表取締役
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授
一般社団法人アンカー 共同代表理事横田 浩一氏
若き起業家たちのリアル、夢を追い突き進む原動力
- 横田 実際に起業してからの苦労も多かったと思いますが、どのように乗り越えてきたのでしょうか。
- 渋川 私は19歳のときに、Kakedasの前身となる会社を始めました。創業から5回のピボットを経て、現在の事業モデルであるキャリアカウンセリングのWebサービスに辿り着きました。国家資格を保有するキャリアコンサルタントとキャリア面談できる「Kakedas」をはじめ、働く人をサポートするさまざまなツールを個人向け・法人向けに提供しています。これまでピボットも経験してきて、事業の新たな方向を模索している時が一番苦しいですね。でも、先輩経営者などと話してみると、思考が整理されたり後押しになったりしました。
- 猪村 私たちChild Play Lab.は、入院中の子どもたちに特化して遊びのプログラムや体験を提供しています。2024年2月から実証実験として5箇所の病院で、絵本と工作キットを配布しています。ビジネスは順調にいっていると思いますが、私の悩みは、私自身のキャリアについてでした。事業スタート時は看護学生だったので、看護師として医療現場で働くか、この事業と向き合うか決められずにいたのです。病棟保育の資格学校で出会った仲間たちに「あなたにしかできないことに挑戦するべきだ」と言われたことで、事業への決心ができました。

- 山本 私は脈拍に応じて光るイヤリング型デバイス「e-lamp」を開発しました。[感情を光で共有するアイテム]として販売しています。18歳まで地元で学生団体の立ち上げや地域の教育事業などに取り組み、高校生起業家として注目いただいたこともありました。大学に入学した頃は自分のやりたいことが見つからずにとても悩んでいました。大学2年の時に現在のビジネスの構想が生まれ、一人で1年半ほど試行錯誤を続けました。3年の終わり頃にやっと未踏アドバンスト事業に採択いただき、資金が集まってくるようになりました。
- 横田 皆さんの共通点は「学生時代からビジネスを始めた」ことです。学生起業はすべきでしょうか?
- 山本 学生起業にこだわる必要はないです。学生起業家は良くも悪くも注目され、学生ゆえに商談を断られることもあります。いま入居しているコワーキングスペースには多様なバックグラウンドの起業家がおり、その様子を見ると起業するタイミングに年齢は関係ないと思っています。

- 猪村 同じく、「学生起業」にこだわる必要はないと思います。一方で、自分自身とじっくり向き合い、本当に情熱を注ぐことができる対象を見つけることができるのは学生の強みです。自身と対話し、起業が選択肢になればやるべきでしょう。
- 渋川 早いに越したことはないです。若いうちは失うものがなく、リスクが取りやすいです。
- 山本 一番重要なのは自分の情熱がなくならないように向き合い続けることではないでしょうか。起業家が事業をたたむ大きな理由のひとつは情熱がなくなってしまうことだと言われています。今、日本全体で起業を応援する仕組みも増えています。それらを活用しながらチャレンジされる方が増えていけば嬉しいです。


トークセッション第2部スタートアップ飛躍の条件とは?
- 登壇者
- シンクロア株式会社 代表取締役
綾部 華織氏
- SyncMOF株式会社 (シンクモフ) 代表取締役
畠岡 潤一氏
- 株式会社MOYAI 代表取締役CEO
渡邊 亮氏
- モデレーター
- 株式会社トイトマ 代表取締役社長
山中 哲男氏
壁を乗り越える力、成功を掴むための道筋とは
- 山中 皆さんは三者三様のビジネスを展開されています。事業を進められる中で、どのような課題がありましたか。
- 綾部 私たちは主に製造工程における検査で活用いただく「PHASERAY🄬」という画像処理技術を開発しています。元々は医療現場から生まれた技術で、画像から影やハレーションを無くし、誤った診断の発生を減らすことができます。可能性のある技術なのですが、基礎技術なので評価をしてもらうのは大変で、資金調達は難しいです。コロナ禍のタイミングで大手事業会社との共同開発に向けた出資契約が白紙になり、一時は事業存続が危ぶまれました。一時的にある投資家の方に出資いただき、何とか苦難を乗り越えました。その際には60%もの株式を渡しました。苦渋の決断でした。その後の調達でその方から株式を買い戻させていただき、今は健全な経営が成り立っています。

- 畠岡 私たちが開発を進める「MOF」は金属イオンと有機分子から成る多孔性物質です。MOFにはガスを分離や貯蔵する機能があり、CO2の吸着や変換をすることで脱炭素社会の実現に活用できます。応用機能として、触媒を組み込むことで、CO2をMOFのなかに通して吸着させ、メタノールやエタノールにすることも可能です。新技術を開発する私たちにとって、壁となったのは「与信」でした。初めは名古屋大学発ベンチャーやJ-Startup CENTRAL選定企業などの称号を活用することで、信用を高めることができました。ちょうどコロナ禍で自動車産業が新しい技術を求めていたこともあり、金融機関を通じての引き合いも多くなり、壁を乗り越えられました。
- 渡邊 弊社MOYAIはAIとDXを活用し、社会課題の解決に向けたソリューションを提供しています。たとえば、LED一体型高機能ネットワークカメラ「IoTube」を首都圏の鉄道3万台に導入しており、痴漢・冤罪ゼロなど安全の維持に取り組んでいます。経営において大きな課題にぶつかった時は、自分の夢や思いを言葉にすることが重要になります。言葉にすることで、協力者が見つかるものです。私の場合、開発の初期段階で子どもの保育園のパパ友が某パソコンメーカーの執行役員をされていて、開発に協力してくれました。また、ローンチの際は通信キャリア企業に務めていた友人が、市場参入についての有益なアドバイスをくれて、鉄道会社に導入いただくことができました。その後も楽しみながら参画してくれる製造メーカーや営業パートナーなど、周りの協力を得ながら壁を乗り越えてきました。


- 山中 皆さんさまざまな壁を乗り越えてこられたということですね。今後の展望についてお聞かせください。
- 渡邊 引き続き、様々な分野でチャレンジしていきます。「安心・安全・快適」の実現に貢献したいです。
- 畠岡 グローバルな事業拡大を重視しています。海外でも展開できる汎用的なプロダクトをしっかりと作って売っていき、世界で認知されるようになりたいと思います。その一環として、来年の万博に常設展示を出しますので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
- 綾部 私たちのような会社は特許戦略がとても大切です。大手メーカーと対等に渡り合うために、周辺特許も含めてどのように独自技術を守っていく必要があります。しっかりと特許戦略を実行しながら、グローバルに事業を展開していきたいと考えています。



スタートアップ支援の最前線、SMBCベンチャーキャピタルの投資戦略
- SMBCベンチャーキャピタル株式会社 執行役員
松下 克俊氏


- 松下SMBCベンチャーキャピタルは「人生を賭けた起業家と、明るい未来を共に築く」という投資理念のもと、「絆」をテーマに全業種、シードからレイターまで全ステージの企業へ投資しています。ビジネスの段階が進んでいるスタートアップには積極的に追加投資も実施しております。投資先は年間10-20社程度がIPOするなど、実績を積み重ねています。私たちは社内に投資戦略部(別名:バリューアップチーム)を持っており、グループ資産を活用してスタートアップを支援している点が強みです。たとえば、営業マッチングにとことん協力し、売上拡大に貢献するなど、投資先のみなさまからも大変ご好評をいただいています。この取り組みは今後さらに強化して参ります。
- 最近ではインパクト投資にもチャレンジしています。また、活動を通して、SMBCグループ内でも重点課題となっている環境問題や貧困、少子高齢化などさまざまな課題解決に取り組み、社会的価値創造を目指してまいります。
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