
日本経済新聞社は7月31日、レオス・キャピタルワークスが特別パートナーとして協賛するスタートアップ支援プロジェクト「NIKKEI THE PITCH」のセミナー&交流会を開催しました。本イベントでは、学生起業家やキャピタリストが登壇。学生起業やソーシャルビジネスの現状と未来、ベンチャーキャピタルをはじめとした金融機関の支援について、活発な議論が交わされました。会場には起業を目指す多くの大学生も来場。日本のスタートアップの盛り上がりを予感させる、熱気あふれるイベントとなりました。
投資信託を通じて支援拡大 起業家に大切なのは『常に考えること』
- レオス・キャピタルワークスの主な業務内容は、投資信託の運用です。現在の運用資金は約1兆4000億円で、そのうち7割は国内企業に投資しています。投資先企業のステージは、今のところ上場企業がほとんどですが、今後はスタートアップを含めた未上場企業の資金調達を積極的に支援していきます。
- レオス・キャピタルワークスは、2003年に共同で創業しました。起業のきっかけは当時の勤務先である投資信託運用会社を解雇されたことです。当時は、ITバブルの崩壊直後で、ファンドを運用するファンドマネジャーはプレッシャーにさいなまれ、私も例外ではありませんでした。解雇されたことはショックでしたが、同時にストレスから解放された思いでした。
- また、チャレンジ精神も湧き上がってきました。外資系の運用会社はサラリーパーソンとしては最上級の給与を得ることができる環境です。その舞台を自分から降りることは容易ではありません。しかし離職した後、まっさらな状態の今が運用会社を興すチャンスだと考えていました。そんな矢先に、共同創業者の藤野英人(レオス・キャピタルワークス代表取締役社長CIO)から声を掛けられ、起業を決心しました。起業家の一人として伝えたいことは、チャンスを見逃さないでほしいということです。
- 大事なのは、「どう生きたいか」を常に考えることです。そうすれば、人生の転機ごとに訪れるチャンスをつかむことができます。ぜひ精一杯の挑戦を続けて、最期に「いい人生だった」と思える生き方をしていただければと思います。

湯浅 光裕⽒
トークセッション第1部学生起業×ソーシャルビジネス
- 登壇者
- Infora 創業者
第7回日経ソーシャルビジネスコンテスト ファイナリスト南光 開斗氏
- 株式会社Logic Link 最高執行責任者
一般社団法人マイパレ 代表理事片野 里菜氏
- 一般社団法人アンカー 共同代表理事
次世代ユネスコ国内委員会 委員長小林 真緒子氏
- モデレーター
- 株式会社横田アソシエイツ 代表取締役
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授
一般社団法人アンカー 共同代表理事横田 浩一氏
社会課題に対する原体験をビジネスに 解決のため収益確保を模索
- 横田現在手掛けている事業の目標を教えてください。
- 南光介護や福祉における、情報格差解消です。契機となったのは、自分が当事者だったことでした。小学生の頃に母がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症してヤングケアラーとなり、私自身も起立性調節障害により中学校2年生で不登校を経験しました。上京後、ALS患者の支援活動を通じて驚いたのが、当時の自分が利用できたはずの行政・民間サービスや、介護ツールの存在を知らなかったことです。そうした情報格差を解消するために、社会資源の総合情報プラットフォームの構築を目指しています。
- 片野生まれ育った環境に左右されず、「学ぶことが楽しい」と思える社会の実現を目指しています。大学入試でAO入試を選択し、志望大学に入学した私は、塾講師としてAO入試対策を指導していました。そのとき、やり甲斐と同時に矛盾も覚えました。塾の受講料が高額であるため、AO入試指導そのものが教育格差拡大の一因だと思ったのです。そこで開発したのが、生成AIを活用し、低額で利用できる探究学習支援アプリ「マイパレ」です。「マイパレ」では、これまでの自分の人生や興味・関心について対話形式で深掘りしながら、主体的に探究学習に取り組めるテーマを探す手助けをします。

- 小林私たちがテーマとしているのも、中高生が取り組む探究学習の支援です。都立中高一貫の中学生だった当時、学びの目的を見失って不登校になった時期がありました。高校進学後に学びを楽しめるようになったのですが、そのきっかけは課外活動やボランティア、短期留学など自主的な学習活動でした。そのような経験から、学生が学校の枠を超えて社会と関わる機会作りや、人生の軸(キャリアアンカー)を見つけるための支援を志すようになりました。現在は、探究学習の企画や伴走、キャリア教育や社会課題解決をテーマとした出張授業などを行っています。
- 横田マネタイズについてはどう考えていますか。
- 南光基本的には寄付モデルを想定していますが、個人の寄付に頼るのは限界があります。現在は「社会資源に関する情報をすべての人に」という理念の範囲内でどう利益を上げるかを模索しています。ソーシャルインパクトは重要ですが、活動を継続するには資金も大事です。


- 片野同感です。当初、寄付モデルや助成金モデルを考えていましたが、探究学習の支援対象を広げていく上で限界を感じました。今のところ教育現場向けアプリのサブスクモデルが主体となっていますが、生徒個人向けのアプリ配信や紙教材の販売、カリキュラムに関するコンサルティングなど事業の幅を広げています。
- 小林学部生時代に企業から内定をもらいましたが、探究活動の支援をもっと続けたいと思い大学院に進学しました。活動資金は助成金中心ですが、それに加え探究学習のカリキュラム策定に関するコンサルティングや、企業向けワークショップ、コンテストへの協賛などを通じて収益源の確保を目指します。
- 横田起業によって利益を追求するだけでなく、社会課題の解決を目指す学生も増えています。多様なビジネスに挑戦する学生が増えていることは、明るい未来の兆しとなるでしょう。



トークセッション第2部ソーシャルビジネスにおける金融機関の役割
- 登壇者
- レオス・キャピタルパートナーズ株式会社 取締役
関 悠樹氏
- 株式会社QRインベストメント 代表取締役社長
浜野 文雄氏
- 株式会社レジャーミント 取締役
ヤボク開発 代表八木 稜太郎氏
- モデレーター
- 株式会社横田アソシエイツ 代表取締役
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授
一般社団法人アンカー 共同代表理事横田 浩一氏
インパクトスタートアップ増加 資金マッチングに好機
- 横田各社の取り組みを教えてください。
- 浜野地方銀行は、生き残りを賭けてマインドの変化を迫られています。具体的には、地域の「共通価値の創造(CSV)」を目指し、リスクマネーをソーシャルビジネスへ投入する必要があると考えています。北國銀行のグループ会社であるQRインベストメントでは、ポートフォリオの28%を北陸三県の企業へと投資。北陸地方の地域のスタートアップ・エコシステムの盛り上げや、能登半島地震からの創造的復興支援を行っています。
- 関レオスグループでは、スタートアップから上場企業まで、ステージに応じた投資を行っています。例えば、レオス・キャピタルパートナーズがベンチャーキャピタルを支援し、新規株式公開(IPO)後には、投資信託を通じてレオス・キャピタルワークスが投資します。2024年に投資信託の運用に関する規則が改正され、投資信託に未上場株を15%まで組み入れることが可能となりました。この改正により、スタートアップ支援にますます力を入れていく仕組みができると思います。

- 八木大学に入学し、モバイルアプリ事業の立ち上げや、インターンとして暗号資産メディアでのマーケッターやブロックチェーン開発会社で、非代替性トークン(NFT)関連のプロダクトマネージャーを経験しました。現在は、NFTの技術を利用したエンターテインメントの証券化ビジネスやコンサルティングを手掛けています。
- 横田起業に対する認識は、年々変化しています。
- 八木就職のためのアピール材料や、コネクションづくりのために起業する学生は少なくありません。一方で、起業した事業に全力で取り組む学生や、就職して会社員と起業家を両立する人も増えています。
- 関大学在学中の2014年に起業を経験しています。当時の起業は、資金面はもちろん失敗したときの機会損失の意味でもリスクが大きいものでした。一方、今は資金面でのマッチングがしやすく以前より投資を受けやすいので、起業へのハードルが下がったと感じています。また、金銭的な成功だけを追うのではなく、社会課題を解決するソーシャルインパクトを求める起業家が増えている印象です。ベンチャーキャピタル側としても資金を供給したいと考えています。

- 八木起業家の立場からお聞きします。ベンチャーキャピタルが、スタートアップに投資を実行する決め手はなんでしょうか。
- 関やはり「人」です。例えば、取り組むビジネスに関する質問をしたときに、ビジョンに基づいた回答ができるかどうか。そこが成功への必然性つながりますし、日々変わっていく外部環境・社内環境に対する軸となります。
- 浜野起業家を支えるチームも見ています。一例として、起業家を脇で支える最高財務責任者(CFO)を務める人物がいれば、ファイナンスも含めた財務的なコミュニケーションをとりやすいですね。
- 八木起業家に必要なのは、法律とファイナンスの知識です。法律を逸脱しないビジネスプランを考えながら、その立ち上げと成長に必要な資金をファイナンスする。そうやって、事業と調達を両輪で回す必要があります。
- 浜野日本が抱える社会課題はたくさんありますが、それは既存の企業の活動が要因となっているケースが多くあります。学生を含め若い起業家が、社会に根付いた多くの課題を解決するビジネスを創出することを願っています。



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