
7月30日、仙台駅の河北新報社本館ホールにて、起業家や自治体などが集まるセミナー&交流会「NIKKEI THE PITCH Meetups」を開催しました。今回集まったのは、企業と行政の連携や東北ならではの食産業に関心のある事業会社や起業家たち。第1部ではスタートアップ/アトツギ/行政の有識者が相互に連携したイノベーションの生み方について議論。第2部では、東北地方ならではの「食」を活かしたビジネス機会について話し、トークセッション終了後には会場が登壇者と参加者による活発な交流の場となりました。
トークセッション第1部“三方よし”から考える、スタートアップ/アトツギ企業/行政の新結合=イノベーションとは?
- 登壇者
- 仙台市 経済局 次長
杉田 剛氏
- 株式会社ミヤックス 代表取締役社長
髙橋 蔵人氏
- 株式会社ソルブレイン 代表取締役社長
櫻庭 誠司氏
- モデレーター
- 千葉大学大学院国際学術研究院 教授
千葉大スタートアップ・ラボ 部長片桐 大輔氏
スタートアップと中小企業の垣根は不要? 地域経済に必要な連携とは
- 片桐本日はスタートアップ/アトツギ企業/行政の皆さんにご登壇いただいています。それぞれどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
- 髙橋ミヤックスは遊具や施設設備を販売する企業です。私は3代目で、アトツギとしての側面を持っています。以前はAIスタートアップを立ち上げてイグジットしました。ミヤックスでは、この経験を活かしたエンタープライズ企業向けのデータ・AI活用などの事業にも取り組んでいます。アトツギ企業には、中小企業の地盤に加えてヒト・モノ・カネが揃っている。いずれかを少し改善するだけでも地域経済に与える経済的インパクトが大きいことは、アトツギの魅力的な点かもしれません。

- 杉田経済局でスタートアップや中小企業の支援、企業誘致などに携わっています。仙台市として現在危機感を感じているのは若者の流出です。東京圏への人口流出において、仙台市は全国で第一位なんです。多くの若者が大学卒業後は東京に出て行ってしまっている。若者にとって魅力ある雇用の場を仙台市として創出していかなければいけません。スタートアップ創出にも力を入れています。昨年からオンラインのアントレプレナー教育を提供し、優秀な20名をシリコンバレーに連れていくプログラムを開始しました。
- 片桐櫻庭さんは急成長スタートアップを経営しています。三井物産のような大手企業からも出資を受けました。行政からのスタートアップ支援や連携についてはどのように考えていますか。

- 櫻庭データドリブンな仕組みを構築し、企業の持続的な成長を支援するグロースマーケティングプラットフォーム「SKEIL」を開発しています。当社は、行政とはあえて一定の距離を保つというスタンスを持っています。行政とあまりにも近すぎると、ビジネスで戦う力が弱まるんではないかと思っているんです。行政からの支援としては、各市町村が集めたデータに誰でもアクセスできるプラットフォームがあると良いのではないでしょうか。国のデータは総務省がまとめていますが、各市町村の情報は十分ではありません。行政が集めた詳細なデータを誰もが使えるようになれば、地場の企業も大手に負けないような価値創造ができると思います。

- 髙橋近年、スタートアップを増やそうという議論があります。私は中小企業とスタートアップを分ける必要はあまりないと思っていて。どのような命題を持って事業に取り組んでいるのかが重要なのだと思います。全員が起業家になる必要はない。事業家も重要な存在です。社会課題に向き合って「三方良し」を実現していれば自ずと売上もついてくる。他の企業がやっていないユニークな課題に取り組めばいいというわけでもないです。これは若者に対して大人が教えていくべきでしょう。
- 杉田仙台市では、将来起業したい若者を2年間地域の企業に送り込む「VENTURE FOR JAPAN」と提携しています。実際に中小企業に入り込んで事業作りを経験できるプログラムです。ユニコーンにはならなくても、中小企業はスタートアップと比べて断然多い。こうした中小企業の底上げは非常に重要です。いきなりスタートアップを立ち上げるのもいいですが、こうした形で若者と企業が交じり合う場が増えると良いのではないでしょうか。


トークセッション第2部東北の豊かな食の新しい取り組み
- 登壇者
- 山形市 副市長
井上 貴至氏
- 株式会社雨風太陽 取締役 C2Cコマース部門長
権藤 裕樹氏
- keiki li’ili’i(ケイキリィリィ)株式会社 代表取締役
浅野 佳織氏
- モデレーター
- 株式会社横田アソシエイツ 代表取締役
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授
一般社団法人アンカー 共同代表理事横田 浩一氏
食でつなぐ地方創生 キーワードは「ごちゃまぜ」
- 横田浅野さんと権藤さんは「食」に関連した事業に携わられています。取り組みについて教えてください。
- 浅野私は山形で採れた農薬・化学肥料不使用の農産物を使った離乳食を作っています。きっかけは子どもの食物アレルギーです。食べ物でひどい症状が出る子どもが世の中にたくさんいる中で、どうすれば子どもが大きくなるまで安全に育てられるんだろうと考えるきっかけになりました。同じ悩みを抱える全国のお母さん達に、安心で美味しい四季折々の農産物を使った離乳食を届けられたらと、事業を開始しました。
- 権藤全国約8,000人の生産者から直接食材を購入できるECサイト「ポケットマルシェ」を運営しています。生産者と消費者をつなげることで食べ物を作る生産者に関心を持つ。そして実際にその地域に行ってみる。こうした関わり方を創出して、地域を持続可能にしたいと思っています。この夏には、全国12地域の生産者を親子で訪れるプログラムも実施しています。

- 横田こうした取り組みは地方創生のチャンスになりそうです。行政の視点からはどのように考えていますか。
- 井上地方には、東京にはないリソースもありますし応援もしてもらいやすい。東京は一極集中が進み、地方であればできたことが東京では埋もれてしまうリスクがあります。都市と地方をかき混ぜていく際に、「一次産業」はわかりやすいテーマです。日本は世界でみても一番食が多彩だと思います。日本海や太平洋が近く、奥羽山脈がある東北は日本の中でも特に自然豊かな地域です。季節の変化を活かした「山菜懐石」があるのは山形くらいではないでしょうか。観光客も世界中からこの山菜懐石を求めてやってきている。それほど日本食には可能性があります。

- 権藤どの地域を訪れても、皆さん「自分たちの地域には何もない」と話すんです。全然そんなことはないですよね。日本全国に名産品があり、その最たるものが食です。食は地方創生の起点になるはずです。特に東北では漁業も盛んで活気があります。新たな取り組みにも前向きな印象です。普段なかなか接点のない人同士をつなげてごちゃまぜにすることで新たな取り組みが生まれ、地方創生に結び付くのではないでしょうか。

- 井上緩やかにさまざまな人とつながることは非常に重要です。本日も山形駅でオープンコミュニティな朝会に参加してきました。企業の社長もいれば学生も参加している。そういう場で新たな取り組みが生まれるんです。鹿児島県長島町にいた際には、よくバーベキューを開催していました。ただ食材を持ち寄るのではなくて、課題を持ち込んで共有する。そうすると参加者から解決のアイデアが出てきて、新たなビジネスも生まれやすいのです。
- 浅野都市部に住む親戚からは「山形は何を食べても美味しい」とよく言われます。それがとても誇らしい。東北はどこに行っても自然豊かで食べ物が美味しいですよね。企業の目線では行政の支援も受けながら、産地ならではの特性を活かした地産地消的な取り組みを共に進めていきたいと思います。


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