皆さんが、事業提携、共創関係といった目的のミーティングをするとしたら、どの様なゴールを設定しているでしょうか。私が海外のスタートアップを日本企業に紹介する際、一番好きな時間は、ビジネスの商談の中でも、「未来をどう共につくっていくか」を探る対話の場です。プロダクトの説明や日本市場に展開したいという思いなどを聞くとき、起業家やスタートアップの人たちが何を大事にしているのか、どんな想いで事業に取り組んでいるのかに気づく瞬間があり、とてもうれしく感じます。今回は、そんな「共創に向けたミーティング」を通して見えてきた起業家の孤独と共鳴、そして対話による協働のあり方についてお話ししたいと思います。
起業家は見えない孤独や悩み抱え挑戦
誰もがいきなり心を開いてくれるとは限りません。初対面でそういったケースは少ないでしょう。なかには私自身が理解できていなかったり、気づいていなかったりするケースもあるかもしれません。ただ、その会話の中で気づかされることがあります。それは、多くの起業家の人たちが見えない孤独や悩みを抱えながら挑戦を続けているということです。事業提携における成功とは、 新規事業の創出、売り上げの拡大、新たな市場への展開であると考えますが、さらに長期的で深い提携の道を探る場では、「内なる声」の大切さも教えられました。
優れた実績などに基づく事業計画は周りの人たちの期待を膨らませて、ワクワクとした感情が人を動かします。他方、人の心が動かなければ、誰も動かないということです。私も現場でお会いする人たちの情熱を感じるたびに、それを実感しています。
しかし、起業家が起業した理由は、すべてが華やかなものとは限りません。「企業文化が変わってしまったので飛び出した」「会社で好きな開発ができなくなった」「誰かの夢を支えたいと思った」などのケースもあります。ただ、どういう理由で始まったとしても、起業の道は孤独でもあります。仲間がいなければ、その孤独はやがて重荷になってしまうのです。
企業担当者の言葉に熱、「心に火がともった」瞬間
だからこそ、誰かに「助けてほしい」と勇気を出して手を差し出したとき、 そこに本気で応えてくれる人との出会いを大事にしているように思います。企業側はそのような場合、共感する人が多く、スタートアップに誠意をもって接してくれ、良いミーティングになるケースが多いです。
担当者の言葉や表情に一瞬の熱を感じた時、私はそれを「心に火がともった」瞬間だと思っています。 たとえば、話の途中で思わず前のめりになったり、自分の経験を語り始めたり、「見つけたぞ!」といわんばかりに目を輝かせて「面白いですね」と言ってくれたり。 そういう小さな変化が、内から出る共鳴の兆しだと感じています。
「このスタートアップと一緒に働きたい」 「何かを一緒につくれたら」 「応援したい」。そう思ってくれた気持ちは、その場に居る人たちの心に残ります。 だから、私はそうしたミーティングを「Great Meeting」と呼んでいます。 たとえ短期的に契約やプロジェクトにつながらなくても、それは未来への確かな一歩になります。
「あなたの想いは誰かの心に届いている」
起業家も企業も、まれに戸惑うことがあります。「なぜ相手から返事がこないのだろう」「あの出会いは意味がなかったのか」。 そんな時にすれ違いが起こるかもしれません。でも、お互いにすぐに動けないケースもあるということも、伝えなければなりません。企業の中で担当者にはそれぞれの立場があり、チームや組織の責任者として既存事業を優先しなければならないケースもあり、心では応援していても、すぐには動けないこともあると思います。
そんな時に私は起業家の人に伝えたいことがあります。「あなたの言葉、想い、情熱は、誰かの心に届いています。すぐに結果が見えなくても、確かに受け取った人がいます」と。それは一緒に未来を切り開いていくための第一歩であると信じています。長期にわたる事業提携とは、心と心をつなぐ旅のようなものです。
ミーティングをファシリテートするときは、それぞれに見ている世界が違い、言葉も、感情も、前提も違う中で、限られた時間という制約の中で何ができるのか考えています。自分の直感を信じたいという気持ちを抑えながら相手の視点に立ち、対話を進めなければならないという場面ではうまくいかないこともあります。まだまだ、学びが足りていないと感じています。
皆さんにとって、良いミーティングとはどのようなミーティングでしょうか。
(SOZO VENTURES プリンシパル 野村哲)
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