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AIテック勢が台頭 スタートアップ新時代の夜明け

近年、生成AI(人工知能)、再生可能エネルギー、宇宙開発、自動運転といったキーワードが注目を集めている。これらの領域では新たなスタートアップ企業が次々と生まれ、その中から米国のOpenAI(オープンAI)、中国のDeepSeek(ディープシーク)、日本のSakana AI(サカナAI)などAIテック勢が急速に台頭してきた。米国では著名起業家のイーロン・マスク氏がトランプ政権に大きな影響力を持つようになり、IT大手も政治に急接近しつつある。かつてないほど存在感を増してきたスタートアップが新時代を迎えている。

日本のスタートアップ投資額10兆円に CVC立ち上げも続々

日本国内に目を向けると、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)に対する関心が高まっている。グローバルに成功しているスタートアップ企業の時価総額は100億円から1兆円近くにまで達し、その成長スピードと市場規模の拡大が目を引く。また、海外の有力な投資家が続々と日本を訪問しており、積極的に投資を行う動きもみられる。

この背景にあるのが、日本政府が掲げる「スタートアップ育成5か年計画」だ。国内の労働力不足や経済規模の縮小といった日本社会の転換期において成長のけん引役として期待されており、2027年度までにスタートアップ企業への年間投資額を22年度の10倍以上となる10兆円規模まで増やす狙いだ。 これに歩調を合わせるようにさまざまな事業会社もコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を立ち上げ、スタートアップ企業への出資のため数十億円から数百億円の投資枠を確保して運営を始めている。

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SOZOのオフィスがあるレッドウッドシティはシリコンバレーの中心部に位置している

多くの日本企業はイノベーションを通じて競争力の強化につなげようとしている。グローバル市場でのシェア拡大の原動力として新規事業に向けた取り組みと投資活動を活発化しているのだ。そのため、国内外スタートアップと補完的なパートナーとして関係性を築き、事業提携を検討する機会は増えている。スタートアップのM&A(合併・買収)の件数は年々増加し、米カリフォルニア州のベイエリアにスタートアップとの協業を目的として拠点を置く動きも広がる。

未来への新しい道を切り開いてきたスタートアップは、多くの挑戦者たちを勇気づけている。例えば、アカデミック分野では、大学や研究機関における長年の研究成果をビジネスへと応用し、社会実装を進めることで、さまざまな社会課題の解決や人々の生活の質の向上に寄与できるのではないか。その可能性に期待を寄せている人は多い。大学生や高校生らが仲間と共に考えたビジネスモデルがどこまで成功するのかを試そうと、まさに起業家としてスタートラインに立とうとしている人もいるだろう。日々の多忙な業務に追われる中、新規事業のアイデアを形にしたり、新たな市場へ可能性について情報を集めたりしながら、職場で上司や同僚と議論を重ねている人もいると思う。リスクをとって挑戦する起業家の姿は、こうした人たちの背中を押してくれるはずだ。

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オフィス入口から2階へと続く階段の壁には投資先のスタートアップのディスプレイが続く

「日米ハイブリッドVC」、スタートアップエコシステムの懸け橋

2011年からシリコンバレーでベンチャーキャピタルをしてきたSOZO VENTURES(ソーゾー・ベンチャーズ)は、これまでにZoom(ズーム)、Twitter(ツイッター)、Palantir(パランティア)、Coinbase(コインベース)など、世界的に有名なスタートアップ企業に投資してきた。それと同時に国内の事業者と日米のスタートアップエコシステムをつなぐ架け橋の役割も担ってきた。

SOZOは米国と日本にオフィスを構え、多様性に富んだチームメンバー構成で「シリコンバレーの日米ハイブリッドVC」とも呼ばれている。本コラムでは日米両方のカルチャーに精通したメンバーの視点を通してシリコンバレーや日本の現場で日々起こっていることを紹介することで、皆さんが理解を深めるきっかけにしていただければと思う。

(SOZO VENTURES プリンシパル 野村哲)