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SusHi Tech Tokyoがつなぐ出会い Oishii Farm創業者が語る東京の可能性

2017年に米国で起業したOishii Farm(オイシイファーム)は、植物工場によるイチゴなどの生産を手がけるスタートアップ企業だ。グローバルにビジネスを展開する同社は、25年に研究開発拠点として東京都羽村市にオープンイノベーションセンターの開設を発表した。共同創業者兼CEOの古賀大貴氏に、東京でアグリテックに挑む意義と、26年4月に開催されるSusHi Tech Tokyoへの期待について聞いた。

研究開発に必要なリソースと支援が充実

オープンイノベーションセンターの外観

――オープンイノベーションセンターの開設にあたり、なぜ東京都羽村市を選んだのでしょうか。

植物工場は、施設園芸と工業技術を基盤としていますが、実はその研究開発に必要なリソースが世界一集積しているのが日本なのです。中でも東京を選んだ理由は三つあります。

一つ目は人材の集積です。採用面に加え、オープンイノベーションのパートナー探しという意味でも、人材が首都圏に集中しているため東京が圧倒的に有利です。二つ目は、ショーケースとしてもセンターを活用するため大企業の幹部や世界中のキーパーソンが視察に来やすいアクセスの良さも重要でした。都心への交通利便性と施設建設費などのコストを総合的に勘案した結果、羽村市が最適な場所だと判断しました。三つ目は、東京という一大消費地への近さです。オープンイノベーションセンターで生産したプロダクトが、消費者ニーズに合っているのか検証できる環境が必要だったのです。

さらに、東京都のスタートアップに対する支援政策と将来ビジョンも大きな理由でした。小池百合子都知事が「2050東京戦略」の中で、都市型農業の重要性を明確に打ち出して、知事自らが音頭を取って推進している。その本気度や投資額も含めて、他の県とは取り組みの規模が違います。そのビジョンに共鳴したこともあり東京都を選びました。

店頭に並ぶプロダクトの様子

スタートアップのための環境を整備

――東京都のスタートアップ戦略について、印象をお聞かせください。

やはりスタートアップに対する支援の総合力が非常に大きいと感じます。東京都にはスタートアップ専門の部局があり、産業労働局などの部署をまたいで連携していただけます。スタートアップ一社ではできないようなことも、東京都のバックアップによって前進できたことが数多くありました。

資金面では、ゼロエミッション関連の助成金を活用させていただきました。10年、20年単位で開発に取り組む研究センターに、スタートアップが何十億円もの投資をするのは容易ではありませんが、一部でも助成金が入ることで長期的なコミットが現実的になります。

――ネットワークの構築など、資金面以外の利点についてはいかがでしょうか。

産官学のオープンイノベーションが進めやすい環境が整っています。学術面では東京農業大学をはじめ高度な研究機関があり、企業では現在10社以上とオープンイノベーションや業務・資本提携を進めています。これも東京に拠点があるからこそだと思っています。

また、SusHi Tech Tokyoを開催するなど、東京都が旗振り役となることで、民間企業もスタートアップとの連携に動きやすくなります。このように行政が先陣を切ってエコシステムを構築し、環境を整備していることが東京の強みではないでしょうか。

植物工場内のロボットによる収穫作業

SusHi Tech Tokyoでの出会いが事業を動かす

――これまでSusHi Tech Tokyoに参加したことで、どのような成果がありましたか。

最初に参加したのは2024年です。あるニュースメディアからパネル登壇のお声がけをいただいたのがきっかけでした。当時は、まだ日本に拠点がなかったのですが、登壇を機に多くの方と接点ができ、優秀な人材の採用にもつながりました。

25年は東京への拠点設立が決まっていたタイミングで、具体的な商談ができました。また、CNNの取材を受けて世界に放映され、海外からも大きな反響がありました。さらに、登壇していた海外の大手企業の幹部を紹介され、持参した当社のイチゴを食べてもらったことで「一緒にやりましょう」という話に発展するなど、会社の方向性に重要な影響を与える出来事もありました。

SusHi Tech Tokyoは年々規模が拡大しており、アジアのスタートアップイベントの中でも、事業パートナーとの出会いが生まれる確率が高い場所だと思います。当社が登壇するという情報を発表すると、告知を見た人から事前に問い合わせが来たり、予期せぬ相手が会いに来てくれたりするなど、セレンディピティ(思わぬ出会い)があります。また、大手企業も多数集まるので、オープンイノベーションや業務連携のチャンスという意味でも非常に価値があると考えています。

――今年のSusHi Tech Tokyoへの期待をお聞かせください。

今回、SusHi Tech Tokyoのフォーカス領域はAI・ロボティクスなど、植物工場が持つ技術的な先進性と重なるテーマです。こうした分野に興味を持って集まる方々と、採用面でもオープンイノベーション面でも新たなつながりに発展していく。そういう機会になればと思います。過去2回の経験から、想定していない話が舞い込んでくる楽しみが大きいですね。

SusHi Tech Tokyoの様子
昨年のSusHi Tech Tokyo2025でOishii Farm CEO古賀氏が登壇した(2025年5月、東京)

東京のポテンシャルを
存分に活用してほしい

――東京で活動しているスタートアップや、これから様々な事業に挑戦しようと考えている方へのメッセージをお願いします。

東京都は、知事の強いコミットメントと予算規模によって、施策やサポートの充実が他の地域と比べて圧倒的です。国レベルで行うような取り組みを地方自治体として進めています。さらに、大企業や優秀な人材の集積、目の前にある世界最大級の市場。これだけのリソースが一カ所に揃っている都市は世界でも稀です。最先端の技術と人材に、世界的に見ると非常にリーズナブルなコストでアクセスできる。これは東京という都市の最大のポテンシャルです。

まず東京都の助成金や支援策を、一度ウェブサイトなどで調べてみてください。スタートアップの経営者は、国や自治体に支援してもらうという発想を持ちにくい傾向がありますが、有用なサポートが数多く用意されています。スタートアップは常にリソースが不足している状態ですから、どんどん利用するべきです。

そしてSusHi Tech Tokyoにも実際に足を運んでください。「知らなかった情報が得られて良かった」と思えることがあるはずです。ぜひ存分に活用してほしいと思います。