平田 富太郎
株式会社GYXUS 代表取締役
世界に埋めない社会を創る - 建設廃棄物から資源循環への挑戦
インタビュー書き起こし
建設現場から排出される使用済み石膏ボードを、再び新しい石膏ボードとして再生する「水平リサイクル」事業を展開する株式会社GYXUS。その創業者である平田富太郎氏が、自身のキャリアの原点から独立、そして世界を見据える現在の挑戦に至るまでを語ります。
キャリアの原点:大量の廃棄物との出会い
大学を卒業後、上場企業に入社した平田氏。22歳で入社し、24歳という若さで千葉県内最大の生産拠点である工場の工場長に任命されました。しかし、彼が最初に直面したのは、工場に山積する大量の石膏ボード不良品でした。その量は実に5万トンから6万トンにも及び、「これをまず片付けるというのが私の最大のテーマだった」と振り返ります。
この大量の廃棄物処理の経験こそが、平田氏のキャリアの「原体験」であり、その後の事業の大きなきっかけとなりました。当時、メーカーでも処理が難しく、最終的には埋め立てるしかないという現実を目の当たりにし、この問題への解決策を模索するようになります。
また、平田氏の価値観の根底には、創業者の祖父から幼少期より徹底的に叩き込まれた「現状に満足しない」という起業家精神と、「現場主義」という二つの教えがあるといいます。
独立への決断:大手企業との「未来像の差」
その後、平田氏が在籍していた会社は、ドイツの大手グローバル企業KNAUFによる友好的TOB(株式公開買い付け)を受けることになります。平田氏自身は、当時役員として会社の「独立」を主張する立場にありましたが、最終的には大手の傘下に入ることが経営上得策だという意見が多数を占めました。
しかし、石膏ボードリサイクルの将来像について、平田氏自身の考える未来像とは異なる方向性があったといいます。グローバル企業としてのKNAUFは、日本の主要大都市圈(東京、大阪、名古屋など)を中心とした戦略的展開を重視していました。一方で平田氏は、「大都市圈のリサイクルはもちろん、地方のリサイクル率もしっかり上げていくことが会社の強みになる」と考えており、工場のない地方地域、例えば北陸や中国、九州といった地域でのリサイクル推進にも大きな可能性を感じていました。
このリサイクルの方向性や展開エリアに関する考え方の違いが、平田氏にとって「埋められない違い」であると感じ、会社を辞めて自身の事業を始めることを決意しました。この独立の際、事前に築いていた人脈の多くがそのまま自身の事業を応援してくれたため、「失ったものは少なかった」と感じており、むしろ「地方や世界にチャレンジできる自由」を得ることができたと述べています。
「GYXUS」が目指す水平リサイクルと社会貢献
平田氏が立ち上げた株式会社GYXUSは、まさにそのビジョンを実現するための会社です。同社は、使い終わった石膏ボードを回収し、再び石膏ボードの原料に戻して、新しい石膏ボードとして建設現場で利用する「水平リサイクル」というビジネスモデルを構築しました。来年、2025年3月頃には最初の工場が稼働を開始する予定です。
同社の事業はすでに高い評価を得ています。日経ピッチでは「ソーシャルインパクト賞」を受賞したほか、埼玉県が主催する「サーキュラーエコノミー・スタートアップビジネスコンテスト」ではグランプリを獲得しました。平田氏はこれらの受賞を、「社会の中で必要とされている事業」であることへの強い確信であると捉えています。
GYXUSの最大の強みは、「環境と価格の両立」です。建設業界では、環境に良い製品であっても価格が高ければ採用されにくい傾向があります。特に石膏ボードは、住宅に住む人が直接価値を感じにくい「目に見えない商品」であるため、価格が同等でなければ使ってもらえません。しかし、GYXUSは「環境にも良くて価格が同等であれば、使わない理由がない」という提案をすることで、地域のビルダーを中心に顧客を獲得しています。
同社の核となる技術は「GYXUS
コアテック」と名付けられた、7つの中核技術の集合体です。これは単一の特許技術ではなく、廃棄された石膏(ハイ石膏)の特性に合わせて、プラントのエンジニアリング全体を徹底的に見直した結果生まれたものです。
成長への課題と未来戦略
しかし、新しい挑戦には当然ながら課題も存在します。一つ目は「資金調達」です。製造業のスタートアップであるGYXUSは、設備投資に時間を要し、IT企業のような急成長モデルとは異なります。このため、従来のベンチャーキャピタル(VC)との相性が必ずしも良くないと感じており、現在は事業シナジーを期待できる大手企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)からの資金調達を模索しています。
二つ目は「法規制」です。日本の廃棄物処理法が「性悪説」に基づき、規制に重点を置いているため、自治体からの許認可取得に課題を感じることもあります。平田氏は、埼玉県のようにGYXUSを廃棄物処理業ではなく「製造業」として評価してくれる自治体との連携が、事業拡大には不可欠であると考えています。
GYXUSは、今後2年半で全国に6つの工場を立ち上げる計画ですが、これに伴う「技術者や本社スタッフの不足」も課題として挙げています。6つの工場のうち、三重と大阪は直営で運営し、残る4つは地域のパートナー企業と共同で展開する予定です。特に大阪工場は規模が大きいため、追加の資金調達が必要になると見込んでいます。
さらに、平田氏の視線は国内にとどまりません。「世界に埋めない社会を作る」というスローガンを掲げ、東南アジア(フィリピン、シンガポールなど)への進出も検討しています。これらの国々では、建設廃棄物の法整備がまだ不十分であり、新築時に発生する石膏ボードの端材がそのまま埋め立てられている現状があります。世界的な石膏ボード市場が2030年には15兆円規模に拡大すると予測される中、平田氏はGYXUSの技術がこの地域の廃棄物問題解決に貢献できると確信しています。
持続可能な社会への貢献
平田氏は、自身の事業が単に石膏ボードのリサイクルに留まらないと考えています。石膏ボードのリサイクル率が向上することは、建設廃棄物全体のリサイクル率向上に繋がるからです。
日本国内の埋め立て処分場の残余容量は約1兴7000万立方メートルとされており、このまま埋め立てを続ければ、いずれ場所がなくなるという喙緊の課題があります。平田氏は、この環境課題の解決に寄与し、「持続可能な社会の維持のために必要な事業」として、その実現に向けて邁進していくことを誓っています。
企業情報
会社概要
| 会社名 | 株式会社GYXUS(ジクサス) |
|---|---|
| 英文商号 | GYXUS Co., Ltd. |
| 代表者 | 代表取締役 平田 富太郎 |
| 設立 | 2023年10月17日 |
| 資本金 | 4,000万円 |
| 本社所在地 | 〒510-8003 三重県四日市市住吉町5-10 TEL.059-363-8808 |
| 事業内容 | 廃石膏ボードを100%主原料とする石膏ボードの水平リサイクル(分離・再資源化・製品化) リサイクルシステムの開発・提供 商業生産開始は2025年冬頃予定 |
| その他拠点 | 東京オフィス:東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー7F Spaces品川 埼玉オフィス:さいたま市大宮区桜木町1-398-1 アドグレイス大宮7F いなべ工場:三重県いなべ市大安町平塚839-1 |
事業内容
廃石膏ボードの水平リサイクル
廃石膏ボードを100%主原料として、新しい石膏ボードを製造する「水平リサイクル」を実現します。分離・再資源化・製品化の一連のプロセスを独自技術で実現し、環境負荷を大幅に削減します。
リサイクルシステムの開発・提供
石膏ボードのリサイクルに特化したシステムの開発・提供を行います。効率的な分離技術から品質管理まで、包括的なソリューションを提供し、持続可能な建設業界の実現を支援します。